Moscow

 07:45に起床。ついに帰国日、15:30にホテルのロビーにtransferが来ることになっている。帰国のための身支度を行う。09:00過ぎに朝食。そういえば、今回の旅行で初のバイキング形式の朝食なので、昨日の夕食を摂り損ねた分を補充。いったん部屋へ戻り、身支度を再確認したうえで、チェックアウトし荷物をホテルに預けて(今回も50P)09:45に外出。天気は今日も快晴、気温は21℃、歩いていると少し暑い。


 まずは都心から少し離れたところにあるコローメンスコエへ。ここは公園のようになっていて、ロシアの古い建築がいくつも保存されている。地下鉄だけで行ける便利さも魅力で、7年前にも訪れたことがある。ロシアの古い建築を観る旅の締め括りとしては悪くない。スモレンスカヤ駅から3号線でプロシャーチ・レボリューツィ駅へ、テアトラリナヤ駅で2号線に乗り換えてコローメンスカヤ駅へ。モスクワの地下鉄は駅間が長く、4駅というのを分かっていて数えていたにもかかわらず、途中で分からなくなってしまい、1駅乗り過ごしてカシルスカヤ駅まで行ってしまった。反対側の路線で待っていて、ふと駅名表示を見ると、コローメンスカヤ駅の表示がない。どうやら、この駅から2つの方面に分かれて走っているようで、戻る方面の列車は別のところから出ていた。いつもながら、ロシアはちょっとした失敗や油断を見逃さずに問題を複雑にしてくれる。
 10:30にコローメンスコエ公園に到着。以前よりも綺麗に整備されたような気がする。17世紀に造られた

スパスカヤ門
を潜って中に入ると、左手にはカザン教会。(
) この教会は現役らしく、中ではお祈りが行われていた。女声の賛美歌の歌声と一心に祈る信者たちの姿が心を打つ。10Pで蝋燭を買い捧げると、隣にいたおばぁさんが小さく会釈してくれた。祈りの邪魔をしないように外に出る。教会の屋根の上には、くすんだ青の玉ねぎに金の星がちりばめられている。さらに進むと、尖った屋根を持った
正面玄関
。ここを潜ると、最大の目玉である、ロケットのような形の
ヴァスクレセンスカヤ教会
がある…はずなのだが、何と大規模修復中。全くついていない。ここは
高台
になっており、モスクワ川と街を見渡すことが出来る。(ただし、モスクワ中心部の方角ではない。)静かで落ち着ける好いところだ。
 いったん中へ戻り、カザン教会と反対側の方角に向かうと、ピョートル大帝の木造の
小屋
がある。写真を撮っていると、民族衣装を着たばぁさんに注意された。外から写真を撮っているのに何か問題でもあるのか? 他にも木造の
建物
がいくつかあるが、スズダリの博物館に比べると迫力不足なのは否めない。それでも、ここは昔のロシアを偲ぶには好い場所である。


 11:30にコローメンスコエを離れ、テアトラリナヤ駅からアホートヌィ・リャト駅へ出る。例によってマネージ広場地下のフードコートに行き、これまた例によってローストビーフとマッシュルーム入りのブリヌイで昼食。いろいろ迷うよりもこの方が手っ取り早くて確実で安い。 13:00頃まで休む。
 やはり、モスクワ滞在の最後は赤の広場しかない。(

) 今日も世界中からたくさんの人が訪れている。平和そのものといった光景。これまでの旅を振り返りつつ、残り少ない時間を惜しむ。ついでに、たくさん出ている露天商を見ると、モスクワ地下鉄路線図(ロシア語版)と旧ソ連の紋章のTシャツを売っていたので自分のお土産用に購入。計500P也。これで手持ちのルーブルは570P, 次回のために残しておくにはちょうどよいところだろう。
 14:30になった。30分前にはホテルのロビーにいたほうが好いだろうと考え(これが役に立つ)ると、時間切れだ。いずれまた訪れることを心に誓い、プロシャーチ・レボリューツィ駅からスモレンスカヤ駅へ。14:50にはホテルに到着し、預けていた荷物を受け取ると、ロビーに私の名札を持ったおっさんがいるではないか。30分早く来てしまったらしい。もし、時間ぎりぎりにホテルに戻っていたらどうなっていたことか。まったく、今回の旅は悪運が強い。すぐに車へ乗り込む。


 このおっさん、スキンヘッドにごつい体となかなか怖いが、片言の英語を話す。いろいろしゃべりながらモスクワの街を走っていく。『あい・らいく・じゃぱにーず・かーる』とかいいだすので『まさかナンパでもするのか…?』と思ったら『トヨタ・ミツビシ・ぐっど』と続ける。車のことだったのか。日本は好きだがドイツとアメリカは嫌いとのことで、ドイツ車やアメリカ車を見る度にブーイングしながら走る。こんなドライバーは初めてだ。
 金曜日の午後でかなり渋滞がひどい。どこだか分からないような道をひたすら走っていく。40分ほどかかって、ようやく空港への道となるレニングラード街道へ出た。時計を見たら『これがいつものことだ』とのこと。さらに30分ほどかかって、16:10にシェレメチェボ2空港に到着。30分早く出発して正解だったかもしれない。


 出発便の掲示を見ると、19:25発東京行きSU581のチェックインは1番カウンターで行われるとのこと。いつもこのカウンターだなぁ。オーバーブッキングの可能性を考えると、早めにチェックインするに越したことはない。税関審査を通過しようとするが『まだだめ』とのこと。審査官らしき人は何人もいて、設備もいくつもあるのに、審査場は1つしか開いていない。流石である。
 16:40になって、ようやく人を受け入れ始めたので、ついでに審査を通らせてもらう。今回も難なく通過。次いで1番カウンターへ。まだブラチスラバ行きの手続きをしているようだが、乗客は誰もいない。係官は携帯の着メロで遊んでいる。一応チェックインを頼んでみるがやはりダメ。ロシアらしく(?)カウンターの前で待つことにする。と、税関審査を終えた日本人が私の後ろに並び始めた。この分ならトップでチェックインできそうだ。お、団体客も後ろについている。あとは、オーバーブッキングがないことを祈るのみ。
 17:30にようやくチェックイン開始。いつもながら、ボーディングパスが発行されると安堵感がある。そのまま、最後の関門・出国審査へ。これも問題なく通過し、Duty Freeへ。さらに大きくなっていて、品揃えも増えているようだ。商品の値段表示は、全てユーロベースになっている。ロシアは、アメリカではなくヨーロッパを指向しているのだろうか。
 このDuty Freeまで辿り着くと、旅を無事に終えられる安堵感と達成感、そして旅の終わりの寂寥感が混ざった不思議な感傷を覚える。これも一人旅のカタルシスかもしれない。うろつくだけうろついて搭乗口へ。この直前に最後の荷物検査とパスポートチェックがある。靴も脱がされるが、靴を入れる箱と金属小物(コインケース・携帯電話など)を入れる箱が別々になっていて、間違えて使うと怒られる。変なところで几帳面ですなぁ。搭乗口で日本の新聞をもらう。旅行中、CNNすら観られなかったので、日本のニュースはさっぱり把握していない。大きな台風が来ていたことを初めて知った。帰国日とぶつからなくて本当によかった。
 19:25に離陸。さらばロシア、また来る日まで。5列前に赤ん坊を連れた人がいて、定期的に泣き出すのでほとんど眠れず。08/27の10:15に成田着。ロシア語しかない世界からロシア語が全く存在しない世界へ、そのギャップにしばし戸惑う。


 スズダリは本当に素晴らしい街だった。あの平穏さが永遠に保たれることを切に祈る。今回もいくつものハプニングがあったが、今回も事前の下調べや『万が一』を考えての段取りのおかげで無事に切り抜けることが出来た。日常から抜け出し、非日常の世界において身を処していくことで、かえって自分自身を取り戻せるような気がする。
 さて、旅が終わって夏も終わり。そして、また日常が戻ってくる…


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