Casablanca

 07:30に起床。身支度を整えて、いったん朝食を摂りにいく。再び部屋に戻り、09:45まで休む。
 チェックアウトし、荷物を預けて、タクシーに乗って約10分ほどでハッサン2世モスクへ。このモスクは、1993年に完成した新しい建造物で、ミナレットの高さは約200mを誇る。イスラームの様式美と現代的なセンスが上手く融合している。(

) モスク部分にたどり着くのも一苦労というくらいの大きさだ。
外壁
は、大理石を基調として、モロッコの特徴を出そうということであろうか、緑や青や白のタイルによるモザイクに彩られている。見学ツアーでなければ中に入ることは出来ないので、しばし周囲を歩き回る。と、突然海が見えた。カサブランカは大西洋に面した港湾都市でもある。海からカサブランカに近づいた際に見えるミナレットもまた美しいものだろう。海風が何とも心地好い。海は、彼方にあるものへの想いをかきたててくれる。旅の終わりというのに、このまま船に乗ってまた旅に出たくなる。(

 再びモスクに戻り、念のために座っている係員に見学ツアーについて訊いてみると『11時からの回は既に満員。14時からなら入れる。』…なんだ、金曜日も見学可能だったのか。しばらく歩いているうちに、モスク部分の扉が開いた。非ムスリムは中に入れないが、中を覗く分にはいいらしい。暗くて全貌を見渡すことは出来ないが、ヨーロッパの大教会にもひけをとらない大伽藍だ。太い柱の一つ一つに精細極まりない彫刻が施されている。クルアーンの朗唱が響きわたるときの宗教的効果は素晴らしいものがあるだろう。(

 再び少し離れて全景を観る。しかし、大きすぎて、なかなか建物の全貌が掴めない。素晴らしい建物には違いないのだが、その建造費と維持費を考えると、果たして現在のモロッコにとって本当に必要なものなのか?という疑問がわいてくる。(
) 日陰で休んだ後、最後にもう一度
全景
を観て、モスクを後にした。


 再びタクシーをつかまえようとするが、なかなか通らない。やっと止まった運転手は『Gare de Casa Portまで20DH』と足元を見る。さっきのタクシーは7DHだったのに… しょうがないので乗る。タクシーは例外なく冷房が効いていないので外よりも暑い上に、たいていの運転手は汗臭い。さっさと降りたいものである。
 カサブランカ港で大西洋でも眺めようか、と思ったのだが、この周囲は何とも饐えた雰囲気がする。あまり長居したくない感じだ。早々に立ち去って、国連広場に戻る。広場に面したカフェで一休み。
 さて、昼食だが、やはり軽いものにしておいたほうが好さそうだ。"Laiterie Wafa"という店で、パニーニとマンゴーのジュースを注文する。パニーニも美味かったが、何といってもマンゴーのジュース。目の前でマンゴーの実の皮を剥き、ミキサーにかけて出してくれる。濃厚な甘みが美味しい。25DH也。


 この近くに、ブティックなどが集まる

通り
があるというので行ってみる。が、半分くらいの店が休みだ。ホームレスも多いし、路面は汚れているし、どうもいまいちだ。近くの露店を覗いてみると、SUDOKU(数独)の本が置いてある。どこでもSUDOKUを解いている人を見かける。本当に流行っているのだなぁ。数字は残念ながら(?)普通の数字だが、解説らしき文章がアラビア語なのが珍しくてつい買ってしまった。
 それにしても、カサブランカ市内は、今ひとつ汚い印象がある。勝手に浪漫チックな印象を持っていただけに、その落差にがっかりさせられてしまう。むしろ、フェスやマラケシュのほうが清潔で健全な活気に溢れているような気がする。
 13:30にホテルに戻り、15:00のピックアップを待つことにした。14:45にドライバーがやって来て車に乗る。『日本人に会ったか?』『いや、ほとんど会ってないよ。』『だろうな。日本人は冬に来ることが多いから。』…季節外れでしたか。


 約40分ほどでカサブランカ・モハンマド5世空港へ。さぁ、ここからが今年の旅行の最後の関門だ。まずはチェックイン。また予約が落ちている、なんてことがありませんように。…あっさりと成田までのチェックインが完了し、カサブランカ→パリのAF1897とパリ→成田のAF278のボーディングパスが発行された。これで一安心。大荷物の人たちの合間をぬって出国審査を終え、無事に免税店街へ。ごく普通の品揃えだが、やっと菓子の箱詰めを見つけたので購入。まぁ、あれだけフルーツが美味しければ、わざわざお菓子を食べる機会は少ないかもしれない。
 16:40にボーディング開始。さっさと乗って離陸してくれ。それにしても、皆ものすごい大きさの荷物を機内に持ち込むなぁ。上の棚がいっぱいになっていて危ないくらいだ。予定通り17:25に離陸。さらばカサブランカ、さらばモロッコ。
 22:20(時計が2時間進む)にパリ到着。到着ターミナルも2Fらしい。ここまでは全て目論見どおりだ。ところが、なかなかゲートに着かず、しまいにはバスでゲートまで行くことになってしまった。どいつもこいつも荷物を取り出すのに苦労している。さっさとバスを出してくれ。22:45にバスが出て、5分ほどでゲートへ。大急ぎでTransitのサインに従って進み、再び手荷物検査を受けて、やっとAF278のゲートであるF52に到着。やれやれ間に合った。が、この1時間の乗り継ぎは心臓と胃によくないので、お勧めしません。定刻の23:25に離陸し、08/26(Sat)の17:45に成田に到着。


 赤茶けた乾いた大地、イスラームやヨーロッパやベルベルなどが入り混じった街並み、人々の生活、どれもが日本の日常とは全く異なっていた。遠く離れた国とはいえ、『日常』という言葉の意味が場所によってどれほど異なるものか、忘れていたことを再認識できた。今の日常が全て、と思い込む必要はないのだ。
 特に、フェスの旧市街は素晴らしかった。売り込みには閉口したが、1000年の間ほとんど姿を変えていない街で繰り返されてきた光景は、今の私にとって衝撃的なものだった。定価や世間の評価などに任せきりにせず、自分なりの価値判断をしていくことの大切さは常に肝に銘じていきたい。
 夏が終わり、また日常が戻ってくるが、押しつぶされないよう、心が硬くならないよう、アラビアの商人のように強かに生きていきたい。『急ぎすぎるやつはろくな死に方をしない』のだ。


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