Tel Aviv / Epilogue

 もっとゆっくりと寝ていてもいいはずなのに、7時に起床。何となく8時に朝食を摂る。品数が少ない…
 全く実感がないが、旅行の実質的な最終日。18:30のピックアップまでは自由時間である。いったん外出用の荷造りをして10時にチェックアウト。今日も海が綺麗だなぁ。(



 テルアビブは20世紀に入ってから出来た新しい街で、歴史的な見どころはないが、Bauhausをはじめとする現代建築群が世界遺産にもなっているので、それらを見てみることにした。Dizencoff通りから、

Dizencoff公園
へ。車道の上に歩行者用の公園を被せるという、なかなか斬新なデザイン。公園に面している
Hotel Cinema
は有名な現代建築なのだそうな。白い壁と、曲線を描く優美で大きなバルコニーが特徴的だ。
 そのまま
Dizencoff通り
を行く。本当に営業している店がない。車も歩行者もほとんどなく、まるで街自体が眠っているようだ。強い日差しとも相まって、どこか非現実ですらある。実相寺のようなシュールなSFを撮れるかもしれない… と、老齢の男性に呼び止められた。『今日はシャバットで何もやっていないから、Rothchild通りでBauhausを観て、そのままヤッフォに行くといい。』と教えてくれた。この親切はちゃんと別の旅行者にお返しします。


 そこからさらに15分ほど歩いて、ようやくRothchild通りにたどり着いた。(

) Rothchild通りへ入ると、通りの中央に歩行者用の公園を配したデザインになっている。両側には様々な現代建築。今でも十分に通用する機能美だ。ただ、実際に住むとなると、住み心地としてはどうなのだろう? エルサレムの古い建築からテルアビブの現代建築まで、本当にいろいろなものを観ることのできる国だ。(

 昼食は、LPで"best burger"と紹介されていた
"Agadir"
へ。下から2番目のサイズであるmaxi(それでも220g)とサラダ、レモネードを注文。パティがきちんとした肉で、炭火で焼いたものかとても香ばしい。サラダも、ここまでろくに野菜を摂っていないこともあり美味。73NIS(別にチップ9NIS)で大満足。


 13時、ヤッフォへ向かうことにした。ヤッフォは約4,000年の歴史を持つ古い港町で、もともとはこちらが本来の街だったのだが、テルアビブの急成長に伴い現在はテルアビブの一部となっている。海沿いの道を歩いていく。陽射しと海風と波の音が本当に心地好い。(


 30分ほど歩いてヤッフォ旧市街に到着。
モスクの尖塔
が出迎えてくれた。そのまま丘の上へと登っていく。海沿いにまた別の
モスク
がある。モスクと海というコンビネーションは意外に新鮮な印象だ。海を挟んで、
テルアビブのビル群
が見える。夜景も綺麗かもしれない。
 丘の上は
広場
になっており、周囲の建物がリニューアルされてカフェやショップとなっている。階段を降りて
昔の港
へ行ってみたが、栄えたという往時の面影は感じられない。
 いったん広場に戻り、周囲を歩き回ってみる。
通りや建物
は綺麗にリニューアルされてはいるものの、ほとんどが観光客相手のショップで生活感も感じられず、さらに小さ過ぎるので、街というよりもテーマパークだ。途中、『願いの橋』というものがあった。自分の星座に触りながら海を見つめると願いが叶う、という昔の伝承に基づいて最近造られた橋らしい。世界各地でこの手のものをやっているが、一向に叶う気配がないのですが…
 丘を降っていく。最初に見た尖塔のある
モスク
は改修中のようだ。
丘の麓にある通り
には、飲み物などを商う店が軒を連ねている。暑さで少々ふらふらしてきたので、レモネードのスムージーで一休み。この爽やかな酸味と冷えが全くたまらない。体内にこもっていた熱が少しずつ散っていったような気がする。
 テルアビブの街へ戻るために歩き出す。
時計塔
が街のシンボルらしい。今回は街を見ようと内陸側の道をとったのだが、店も開いてないし、建物も特に見るべき特徴はない。本当にアメリカそっくりで、NYかSFを歩いているような感覚だ。(
) 途中、
妙な寿司屋の看板
を見かけた。テルアビブでは寿司が人気らしく、それも、日本人が思いつかないような独創的な寿司らしい。食べてみたかったが、シャバットで休みなのが残念。
 Dizencoff広場近くのコーヒーショップで一休みし、Frishman通りを海のほうへ行き、最後に海を見納める。徐々に陽射しが傾いているがまだまだ明るく、人手も多い。本当に暖かくて爽やかな海だ。いつか、戻ってきたいなぁ…
 16:30にホテルに戻った。ここからは、出国審査と帰国に向けての準備だ、まずは汗を拭い、上半身だけ着替えておく。次いで荷造りをやり直した。写真をバックアップし、今日の日記をつけておく。後は18:30のピックアップを待つのみ。


 18:30にピックアップがやって来た。下手な英語で一生懸命に話そうとする、人のいい運転手だ。重さ400kgのマグロを釣ったことがあるそうな。
 ヤッフォを経て高速道路に乗り、19時にペングリオン空港に到着。いよいよ、イスラエル旅行のクライマックスであるセキュリティチェックと荷物検査である。テロ対策のため、イスラエルはこれらを厳重に行っていることから、空港には出発の3時間前には到着するように、と案内されている。今回は、さらに安全を期して、4時間前に到着するように計画を立てていた。
 まずは最初の預託荷物検査の列に並ぶ。その間に係官のパスポートチェック。『入国日は?』『入国の目的は?』『誰かから無料で物をもらったか?』『イスラエルに友人・知人はいるか?』『ヘブライ語を話せるか?』など。アゼルバイジャンのヴィザをアフガニスタンのものと勘違いしたのか、目の色を変えて『なぜアフガニスタンに?』と訊いていたときはこちらも驚いた。イスラーム圏については敏感なのか、アゼルバイジャンへの入国目的・滞在期間・宿泊場所などを訊かれた。また、中国に何回か入国履歴があったためか、『中国に住んでいるのか?』とも。こんなことを気にするなら、入国審査のときに訊かれてもよさそうなものだが… これらが終わると、パスポートにシールが貼られた。バーコードが印刷されており、預託荷物と連携させているようだ。
 次に、預託荷物のX線検査。終わると、なんと機械から(比喩ではなしに)預託荷物が飛び出てきた。
 続いて、預託荷物の開封検査。まず、旅行カバン内の電子機器を全て取り出す。(電源の延長コードも該当する。) 次いで、ヘラのような探知機で、文字通り隅から隅まで撫で回していく。きちんと詰めた衣服類も全て無造作に取り出されてしまう。小バッグ類も全て中を見ていく。ようやく終了し、再詰め込みを許可された。担当してくれたのは気のいいおねぇさんで、買ったお菓子を見て『ハルヴァ好きなの?』と訊いたりしてきた。こういう人だと少しほっとする。とにかく、全てに協力的であることをアピールしておく。ようやく完了し、再度の詰め込みを許可された。詰め込みが終わると、またタグをつけられた。
 時刻は19:45, まだKE958のチェックインが始まっていないため、旅行カバンはそのまま検査場で預かることに。チェックインが始まると、係員を伴ってチェックインカウンターに行くのだそうな。ここまでやるのですねぇ… 傍で座って待っていると、先ほどのおねぇさんに呼ばれた。行ってみると、他にも日本人がいたのだが、英語が分からないとかで通訳を頼まれた。
 20:00にチェックインが始まったので、別の係員とともにチェックインカウンターへ。ほとんど、いや確実に、見張りである。このカウンターのおねぇさん(中東系の顔立ちで、なかなかの美人さん)は日本語を使うことが出来た。KE958と、インチョン発成田行きのKE705にチェックインを完了しボーディングパスをもらった。KE958は通路側を取れたが、KE705が窓側になっている。かなり前のほうの座席だし、2時間のことだからこれでいいかな…
 続いて手荷物検査。ここでもバックパックの中身を全て件の探知機で撫で回す。靴も同様。ようやく終了し、出国審査へ。20:30に全て完了。何だか気疲れした…


 神殿のような

通路
を、往路とは反対側の道を行く。本当にわずか1週間前のことだっけ…? もっとずっと長い期間、イスラエルを旅していたような気がする。
Duty Free
は、円形の広場を中心として放射状に通路が伸び、それぞれの通路にゲートが設けられているという構造だ。何だか空腹を覚えたので、ケバブのピタサンド(フムスとサラダ入り)とレモネードを注文。ケバブが予想外に脂が乗っており、香ばしく焼きあがっていて美味だった。Duty Freeでバクラヴァのパックを売っていたので自分用に購入。ただ、あの味を出すには、シロップをたっぷりかけないとだめかも。ここまでの日記を書いておく。
 22:30に搭乗開始。往路で近くの席に座っていた韓国人の女の子たちと遭遇。向こうも気付いてくれ、手を振ってくれた。今回も近くの座席だったらいろいろ話してみたかったのだが。
 23:00に離陸、さらばイスラエル、いつかまた来る日まで。1時間ほどで機内食が出たので、今回はビビンパを選択。レンジで温める御飯をチューブ入りコチュジャンをかけながら具材を混ぜるだけだ。そこそこに美味しい。そのまま6時間ほども眠ってしまった。


 08/12(sun)の15:00(時計が6時間進む)にソウル・インチョン空港に到着。乗り継ぎ手続きも15分で完了しDuty Freeへ。そのまま、往路で見つけた無料のシャワーを浴びた。これはいいサービスだ。さて、ここで何かを買う気にはならないし、腹も減っていないので、日記の校正をしている。Wi-fiも無料で使えるので、テキストはDropboxで全てクラウドに同期できるのも有り難い。
 18:05に搭乗開始。なんと、ビジネスクラスの座席だった! エコノミークラスが満席だったのだろうか? こういうこともある、とは聞いていたが… 生涯初のビジネスクラスである。座席の広さがエコノミークラスとは段違いだ。足も思う存分伸ばせる。ただ、機内食はエノコミーと同じだった。わずか2.5時間のフライトではあるが、むしろ疲れを取ることができた。21:00に成田着。いつもながらタキシングが長すぎる。


 長い歴史を持つイスラエルを旅するだけに、期待は大きかったのだが、実際に訪れてみると、その期待を上回る見どころがあった。特にエルサレムは、まさしく『聖地』であった。
 一方、ベツレヘムで垣間見たような、この土地を巡る長い争いもまた現実であり、エルサレムのユダヤ人地区やティベリヤやテルアビブの平和な繁栄を感じつつ、ふと影のように心に差してくることがあった。
 どうすれば解決できるのか、そもそも解決できるものなのか、全くわからないが、エルサレムで素晴らしい笑顔を見せてくれたアラブ系の少女と、泣き止んでくれたユダヤ人の赤ちゃんが、ともに平和で幸福な暮らしを享受できる土地であってほしい。


 なお、空港のDuty Freeで買ったバクラヴァだが、シロップがかかっていて瑞々しいのはともかく、ものすごく胸やけがした。



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