曇り時々晴れ。気温約10度、やや肌寒い。夜のうちに雨が降ったようで、朝には路面が濡れていた。
まず、地下鉄に乗って
へ行く。セルギエフ・パッサート(Сергиев посад)という、モスクワから約100km離れた街へ行こうと考えていたので、そのための電車の切符を買うためだ。ベラルーシ駅の2階にサービスセンターがあって、ここなら英語が通じるという話だったからだ。ところが! 行ってみれば、誰も英語を使えない。セルギエフ・パッサート行きは諦めざるを得ない。それにしても、"Вы говорите по-ангрийски?"と"Я не говорю по-русски"だけはすぐに出てくるようになった。
地下鉄でボロヴィツカヤ駅へ戻る。少しロシア語にも慣れてきて、地下鉄でもどう動けばいいか分かり始めてきた。モスクワの地下鉄には、一応各線に名前がついているもののほとんど表示されていない。また、乗り換えの駅でも、各線毎に駅名が違っている。つまり、複数の駅の連絡なのである。乗り換えの際には、"на станцню (駅名)"を目指して進む。その下には、その線が停車する駅名が全て書いてあるのだが、方面別になっておらずただの羅列になっているので戸惑う。その駅に着けば、発車する列車の停車駅が番線別に表示されている。その駅から地上に出る場合は、"выход в город"のとおりに進めば出られる。
さて、噂に違わず地下鉄の駅はとても美しい。
、などなど…革命的なものが多いのがやや気になるが。
対照的に、はとてもぼろい。壊れかかってる。
ボロヴィツカヤから
(Мавзолей В.И.Ленина)へ行く。途中、トロイツカヤ塔にかかる橋の下にある荷物預かり所でカメラを預けねばならない。表示もないし、分かり難いことこの上ない。それから、いよいよレーニンと対面である。
内部は薄暗く、花崗岩で赤黒い。そして廟の中央に、レーニンの遺体が生前のままの姿で安置されていた。やや硬くなっているように見えるものの、ちゃんと肌色をしている。意外に小さな人のようだ。眠っているようだが、その顔にも何か確信と威厳を持っているような気がした。
廟の後ろには、歴代書記長をはじめソヴィエトに貢献した人が眠っている。スターリンの墓もここにあるが、フルシチョフだけはここにはない。さらに、クレムリンの壁にも、ソ連内外でソ連に貢献した人が眠っている。ガガーリンの墓もあったが、驚いたことに彼は34歳で死んでいるようだ。
ここは、まさに歴史を物語っているところといっても言い過ぎではない。歴史を変えた人々と対面できる。
再び地下鉄に乗ってスモーレンスカヤ駅へ行き、
(ул. Новый Арбат)へ行く。異様に巨大で全く同じ形のビルが4つずらっと並んでいる通りだ。以前は「社会主義の成功の産物」として紹介されていたらしいが、こんな街、好きになれますか? 一応、モスクワでも指折りの繁華街らしいが。
ここには、メロディアというレコード屋がある。旧ソヴィエト最大のレーベルだ。期待していったのだが、田舎町のレコード屋並みに小さい! 何でこんな時だけ小さいんだ。分類もジャンル別までで、極めて探しづらい。それでも欲しいCDを見つけたのだが、ここでロシア式買い物を初体験した。まず、店員に価格の伝票を書いてもらって支払所に行きお金を払ってレシートを受け取り、それを先ほどの店員に渡して品物を受け取るのだ。めんどくさい。
その後、
(ул. Арбат)を歩く。ここは、モスクワで一番若者の集まる通り、らしいのだが、実は露天のお土産屋の街だった。マトーリョシカはもちろんのこと、Tシャツや旧ソヴィエト軍の軍装品まで売っている。しかも、「コニチワ」とか「ワリビキ」などと話し掛けてくる。さらに、ルーブルでは払えず、ドルを使わねばならない。いろんな意味で観光客相手のところであった。ちなみに、レーニンの小さな壁掛けを$10で買った。
ここのカフェで食べた"GOULASH HUNGARIAN"(牛肉のハンガリー風煮込みライス添え)は、肉は冷えてるわ飯は炊けてないわで、とんでもなくまずかった。これで71Pも取りやがった。惣菜屋で買ったピロシキもどきも、食べてみたら「半生状態の挽肉を揚げたもの」でまずい。どうも食べ物のいいのに当たらないなあ…
地図を見ると分かるのだが、モスクワという街を曲がりくねってモスクワ川が流れている。このモスクワ川を下る遊覧船があるので、乗ってみた。まずキエフスカヤ駅へ行き、そこから5分程度歩くと川岸に船着き場がある。乗船料15Pを払って乗り込み、のんびりと
を下る。はなかなかの年代物でちょっと怖い。ノヴォデヴィッチ修道院、レーニンスタジアムなどを見つつ、1時間もするとクレムリンが見えてくる。というのもなかなかだ。ホテル・ロシアを過ぎたあたりで船を下りる。客もほとんどいないが、けっこう面白いのでお勧めだ。
近くにあるのは、スターリン様式で建てられたである。市内にはこの他にもいくつかこんな建物があるが、あまりいい趣味ではないと思う。
夜は、ボリショイ劇場(Большой театр)でバレエを観る。噂通り、
には息を呑むばかりだ。あきれるほどに美しい。ただ、ところどころにあったソヴィエトの紋章はよけいだろう。
演目が日本で聞いていたのとは変わり、「アニュータ」というものだった。チェーホフの原作にガブリーリンが曲をつけたらしい。あらすじは省くが、演技は素晴らしいものだった。バレエには台詞がないので、体の動きと音楽で全てを表現しなければならないのだが、素人目にも歓喜や愛情表現は十分に分かる。くるくる回る技巧だけに目を奪われなければそれなりに分かるのだ。また、バレエといっても四六時中踊っているわけではなく、時に踊らないときがある。悲しみの表現などに、それまでの対比として有効だ。とにかく、美しい。モスクワを訪れるなら、ボリショイでの観劇はぜひ入れておくべきだろう。
帰り道に赤の広場を通った。
やが幻想的に美しい。
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