Füssen

 6:40に起床し、身支度を整えて朝食を摂る。8:00にはチェックアウトし、駅へ向かう。掲示板でフュッセン行きの列車が8:52に30番線から出ることを確かめて、30番線で待つ。
 8:30頃に

RE21248
が入って来たので、2等客車に乗る。前回で懲りていたので、若者のグループからなるべく遠ざかり、1等車に近い、お年寄りのグループの側に座った。定刻通りに出発。
 ミュンヘンから少し離れると、郊外というより田園の風景になる。畑が広がり、所々に赤い屋根の集まっている村がある。村の中心には必ず高い塔を持った教会が位置している。そんな田園を通り抜けて、10:57に
Füssen駅
に到着した。
 今日泊る予定の
Hotel Sonne
は11時からチェックイン可能なので、まずはチェックインを済まし、
111号室
に荷物を置いて、駅へ戻る。ここから、かの高名なノイシュヴァンシュタイン城(Schloss Neuschwanstein)行きのバスが出るからだ。ここはとても混む上、空模様がどうにも怪しいので、早めに見ておくに越したことはないと考え、昼食も摂らずに強行する。


 11:50にKönigsslosser行きのバスに乗り、約10分でホーエンシュヴァンガウ(Hochenschwangau)に到着する。ここから城まではかなりの登りになるのだが、途中まではミニバスが走っているのでそれに乗る。予想通り、世界中から観光客が押し寄せていて、とても混んでいる。日本からの団体も何組もいる。
 バスに乗って10分ほどで停留所に着き、そこからは徒歩での登りになる。まずは脇道にそれ、マリエン橋(Marienbrücke)から

を望む。なるほど、確かに美しい。ディズニーがシンデレラ城を造る際に参考にしたというが、やはり芸大は本物、基礎が違うのである。この頃にたまたま晴れてくれたのも有り難かった。その後は、ひたすらに登り下りの道を歩いて
を目指す。城の麓で入場料12DMを支払い、
城門
から中に入る。自由見学は出来ず、ガイドとともに30名程度のグループで入場するので、英語の列で待つ。日本語の列もあるが、いつ入れるのか分からないので遠慮していたところ、団体が大挙して押し寄せてあっという間にいっぱいになってしまった。まあ、この程度の英語なら何とかなるだろうと思い、そのまま英語のグループで入る。


 この城は、バイエルン王ルードヴィッヒII世が、強く憧れていたワーグナーの歌劇の世界を現実化するためだけに建てたというとんでもない謂れを持つ。政治や戦争に失望した王は次第に自分の世界にのめり込み、こうした城をいくつも建てては芸術に耽っていたらしい。いうなれば究極のヲタクである。王の築城趣味のために国家財政は傾き、そのため王は突然に精神異常者との診断を受け幽閉され、翌日には湖に死体となって浮いたという伝説的な最期を遂げた。
 各部屋は全てワーグナーの歌劇の場面からとられた装飾で彩られており、ため息の出る美しさである。城の中には、『タンホイザー』の場面を再現するための人工の鍾乳洞まであり、色とりどりの照明が幻想的な世界を創り出している。ここまでやれば立派の一語に尽きる。まあ、他人には理解されないだろうが、本人は理解されたいどころか、他人の目にも触れさせたくなかったに違いない。事実、王は自分の死後は城を破壊するように遺言していたが、その遺言も空しく城は公開され、こうして私も目にすることが出来るわけである。生前は国家財政の浪費としか評価されなかった城も、現在ではバイエルン州最大の観光収入源として経済に大きく寄与しており、公共投資の判断の難しさを思い知る。ま、何事も徹底してやれ、ということだろうか。
 なんてことを思いつつ城を出ると、思った通り雲行きが怪しくなってきた。天気のいいうちに山を出ることにし、下りのミニバスでホーエンシュヴァンガウへ、さらにそこからバスで15:00頃にフュッセンへ戻った。


 改めてフュッセンの街を歩くことにする。この街は、ロマンティック街道の終点に当たる街で、空気も高原のような爽やかさだ。中心となる

ライヒェン通り
(Raichenstr.)は歩行者天国になっている。が、土曜日のせいかほとんどの店が休みだった。途中で見つけたカフェに入り、白ソーセージとカプチーノで遅い昼食を摂る。その後もうろうろしてみたのだが、綺麗な街ではあるがとても小さく、刺激には欠ける。見所もあまりなく、壁画に彩られた
聖霊シュピタール教会
(Heilig-Geist-Spitalkirche)くらいか。10分も歩くと
レヒ川
(Lech)に出る。翡翠色をした綺麗な川だ。川沿いに歩くとオーストリアとの国境に出る。
 街のあちこちで
奇妙な紋章
に出くわす。これは、フュッセン市の紋章なのだそうだ。Füssenという名前はもともとFüsse(足)から来ており、さらに3本の街道が交差する街ということを示しているのだそうな。
 17時過ぎにはホテルに戻る。営業してる店もあまりなさそうなので、ホテルのレストランで夕食を摂ることにする。時間があるので、早めに日記を書いているわけである。
 明日は8:00のヨーロッパバスでロマンティック街道をローテンブルクまで北上する。
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