Moscow

 08:45に起床。昨日で意外に手持ちのルーブルを消費したので、$20を約700Pに両替しておく。
 今日は、セルギエフ・ポサドに行くため、予め日本で手配しておいた日本語ガイドと10:00にロビーで待ち合わせ。たどたどしい日本語を使うガイドと運転手の2人がやってきた。
 セルギエフ・ポサドは、モスクワの北東約70kmにある古い街である。街の中心には、聖セルギエフが14世紀に創立したトロイツェ・セルギエフ大修道院があり、現在も約300人の修道僧が暮らす、ロシア正教の精神的支柱とされている。また、この街は、モスクワ郊外に環のように点在する古都群『ザラトーエ・カリツォー』(『黄金の環』の意。)の入り口ともなるところである。いずれ、このザラトーエ・カリツォーを廻ってみたいものである。
 モスクワ市街からミーラ(『平和』の意。)大通りへ。本当に車の数が多い。モスクワの大通りは片側3車線なんてのがざらにあり、しかも信号も横断歩道も少ないなど車優先の設計がされているのだが、肝心のドライバーが何でもありの運転をするのでかえって混雑に拍車をかけている。ガイドによれば『約70%はロシア製の車』で、理由は安い(約$6,000~)からだそうな。ただし、ロシア製の車には冷房はついていないとのこと。モスクワの街を一周する大環状道路を過ぎると、道はヤロスラヴリ街道と名を変える。道はますます混雑し、とうとう渋滞に。『土曜の朝なので、郊外のダーチャ(別荘)に向かう人が多い』のだそうな。このドライバー、とんでもない運転テクを持っており、狭い車間を縫うように走ったり、ひどい時は歩道を走って先へ行く。かなり肝を冷す。
 途中、コロリョフという街を通過する。はて何処かで聞いた名前…と思っていたら、『民生用ロケットを製造するエネルギア社があります』とのこと。そうだ、コロリョフは『ソヴィエトのロケットの父』といわれた人の名前ではないか。降りてうろついてみたい強い衝動に駆られる。
 周囲の風景は初秋といったところだろうか。所々の木々が色づき始めている。さすがに、白樺の林と平原という『ロシア的風景』というわけにはいかない。45分も渋滞に揺られていると、なぜか道の2車線を占領してフリーマーケットをやっているのに出くわした。それを突破するとすいすいと走り始める。
 1時間半ほどでセルギエフ・ポサドに到着。まずは展望台に案内してもらう。ここからは、トロイツェ・セルギエフ大修道院の

全景
がよく見渡せる。戦争に備え、城壁で囲まれているのだそうな。再び車に乗り、城壁を3/4周ほどして入り口へ。途中の
並木道
は何ともいえず良い雰囲気。
 一箇所しかない入り口は、団体客や学校の遠足などで混雑している。修道院内の各教会に入るためには、修道院のガイドの付き添いが必要とのことでしばし待たねばならない。その間に、それぞれの教会の外観を観て廻ることにする。(ちなみに撮影料100Pが必要。)まず眼に入るのは
ウスペンスキー大聖堂
。クレムリンにある同名の聖堂を模して造られたものだそうな。青地のドームに配された金の星がロマンチックな雰囲気を醸し出している。その右に聳えているのが
大鐘楼
。キエフのペチェルースカ大修道院と同様、これが典型的なロシアの修道院の造りなのだろうか。さらに奥には、青い外観が特徴的な
スモーレンスカヤ教会
が控えている。
ウスペンスキー大聖堂
の正面に廻ると、カラフルな小屋が2つ建っている。難病を治す力があるという水を汲める小屋だそうな。このデザインと色彩感覚は、ほとんどテーマパークである。その左手にある
トロイツキー聖堂
がある。聖セルギエフが亡くなった場所に建っており、内部には聖セルギエフの棺が祭られているとのこと。その側にある
ドゥホフスカヤ教会
は、聖セルギエフの弟子が亡くなった場所に建っているそうな。
 入り口に戻ると、修道院のガイドさんが待っていた。まずは大食堂へと案内される。皇帝や貴族の来訪の際の歓迎宴などに使われ、
外装
はロシア風バロックなのだそうな。内部には
祭壇
があり、金箔とイコンが祭られている。次いでウスペンスキー大聖堂へ。ここの
内部
も同様、祭壇はイコンで埋め尽くされているが、壁面にはフレスコ画。クレムリンでもそうだが、宗教に賭ける情熱にはつくづく圧倒させられる。以上で修道院のガイドの案内は終わりで、最後にトロイツキー聖堂へ向かう。聖セルギエフへ祈りを捧げる人々が長蛇の列を作っているが、ガイドはその脇をすり抜けて割り込んでしまった。ただの見学であれば並ばなくてもいい、ということらしいのだけど、何となく後ろめたい。棺は銀で出来ており、侍祭が何やら唱えている。人々は棺に祈り、口づけをしていく。
 この修道院では、修道学校と修道大学の2つを備えているのだそうな。学校のほうでは、地方の小さな町の教会の司祭を育成しており、こちらのほうは結婚しなければならず、毎年ある時期になると国中から司祭との結婚を希望する若い娘が集まってくるとか。一方、大学を出た司祭は、大きな町の司祭を振り出しに宗教的権威を登っていくが、妻帯は許されないのだそうな。
 さすがに教会だけあって、結婚式のカップルを何組も見かける。モスクワからわざわざ式を上げに来る人も多いのだそうな。


 13:30にセルギエフ・ポサドを後にし、ヤロスラヴリ街道をモスクワへ戻る。帰りの道はスムーズで、14:30にホテルへ戻った。ついでに、ガイドさんに明日のtransferの手配を依頼し、16:00にホテルへ来てくれることになった。ちなみに、今年はSARS騒動が収まってから日本からの観光客が急に増え、例年なら9月上旬に観光シーズンが終わるのに今年は10月も仕事があるのだそうな。
 天気は曇り、昨日よりも寒いので、赤の広場の周辺をぶらぶらすることにする。聖ワシリー寺院の前も結婚式のカップルが多い。今日は何かの記念日なのだろうか? 何組かに写真を撮らせて頂いた。(

) 起きてからほとんど何も口にしていないのだが、この時間に食べるとかえって変なことになりそうなので、カフェにでも行こうと思い、カメルゲルスキー横丁へ。短い通りではあるが、モスクワには珍しく自動車の進入が出来ないようになっており安心して歩ける。通り沿いにあるカフェ"ZEN"へ。まるっきりスターバックスのようなカフェである。カフェ・オ・レとコーヒーケーキで180P也。それにしても、外は冷たい風が吹き、道行く人もセーターやジャケットの襟を立てているというのに、オープンカフェでアイスクリームを食べる人が後を絶たない。こいつらの感覚はいったいどうなっているんだろう…
 反対側のクズネツキー・モスト通りを歩く。裏通りではあるが、最近洒落た店が増えつつあるらしい。ここにある『モスクワ芸術家会館』で、お土産用に手塗りの小箱2つを計600Pで買った。
 17:00を廻り、さすがに空腹に堪えかねたので、昨日の『ゴドゥノフ』にもう一度いく。昨日の一皿も忘れ難いのだが、今日はあえて定番の『ビーフストロガノフ』を注文してみる。日本で食べるものよりもクリームが多めで、クリーミィで美味しい。何を食べても美味しいレストランだ。紅茶も含め、計720P也をVISAカードで支払う。ちなみに、ここの入り口で案内をしてくれる
店員さん
はかなりの美人。
 ボリショイ劇場横のボリシャヤ・ドミトロフカ通りにある『ナーディン』にて、これまたお土産用のクリミア・ワインを探す。どうせなら、ウクライナ産のワインのほうがウケを狙えてよい。マスカットから作られたという甘めのもの3本を計1,580P也で購入。さらに、これまたウケ狙いのロシア製チョコも購入。
 ホテルに戻り、明日の帰国に備えて荷造り。ワインとチョコを入れるのはなかなか難儀だが、これを見越して荷物を少なめにしておいたので何とか収められた。
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