Day 1 in Hangzhou

 本来ならば、今年も例年のような一人旅に出るはずであったのだが、出発3週間前に『不慮の事情』により中止を余儀なくされてしまった。1年間待ち望んだ最大の楽しみを直前で奪われた心境は筆舌に尽くし難い。偶然知ったTXN系列『この夏は忘れない』が良い一人旅番組となっていった(もっとも、これだけ見てくれのいいのがサーフボードを背負って『何かを探す』旅に出ていれば絵にもなるわな、と負け犬まっしぐらな私としては思わざるを得ないが。)こともあって、どうにも諦めきれない。このまま1年を過ごすのは堪えられないなので、10月の連休を利用して短めの旅に出ることにした。
 日程や気分からみて、近距離かつ直通便が飛んでいて、何日も楽しめそうなスポットがあり、しかも落ち着いた街が良い。というわけで、今回は中華人民共和国・杭州(Hangzhou)に行くことに決めた。準備の手間を省くため、往復のフライト・ホテル・空港までの送迎のみが含まれているJALPAKのフリープランを利用した。観光で中国を訪れるのは初めてである。(余談だが、国連常任理事国全制覇を達成していたことになる。『悪の枢軸』全制覇はかなり難しいが。)
 (以下、出来る限りピンインを併記した。そのほうが現地で役立つからである。間違いなどがあればご指摘頂ければ幸いである。)


 09:35発のJL635に乗るため07:00に成田空港着。これまでと違い空港の団体カウンターで航空券を受け取るのだが、航空券なしで空港に行くのは何となく落ち着かない。まぁ、航空券を受け取ってしまえばいつもと同じなのだが。搭乗ゲート周辺は年配の客が多い。杭州は若い人が行くところではないのだろうか? 09:35離陸の予定が、搭乗に遅れたのが何名かいるらしく30分ほど遅れた。そんな輩からは罰金を取って、待たされた他の客に何か振舞えばいいのに。
 台風の影響か、フライトはかなり揺れた。杭州の空港には定刻からわずか15分遅れの12:10(時計が1時間戻る)に到着。しかも、この遅れを詫びる機内アナウンスが何度も流される。アリタリアやアエロフロートにも見習って頂きたい。まずは健康状態の自己申告票を提出、次いでImmigrationを通過し、荷物を受け取って、出口で迎えてくれるスタッフと合流。車に乗って高速道路を市街区へ。ガイドの女性がいろいろ説明してくれた。いわく『このあたりの農家は中国でも一番の金持ちで、新しいアパートが次々に建っています。』『このあたりの茶葉一枚は米一粒と同じ値段で取引されます。』『西湖は自然に出来た湖ですが、水質を保つために月に一度水の入れ替えが行われます。』『10/01は国慶節で昨日まで皆休みでしたが、今日から普通に戻りました。』などなど。
 45分ほどで宿泊予定のホリデイ・インへ到着。チェックインもガイドさんがやってくれる。有り難いような物足りないような。と、ガイドさんに呼ばれたのでフロントに行くと『ホテルの備品がなくなったり破損したときのためにクレジットカードを提示して欲しい。』とのこと。セコいなぁ。10/12の待ち合わせの時間を確認してガイドさんと別れ部屋へ。エビアンが2本置いてあるので取ろうとしたら、横に小さく『非免費:3元』とある。セコいなぁ。(もっとも、バスルームに『免費』の中国製ミネラルウォーターが2本置いてあったが。)


 杭州は2000年以上の歴史を持つ古都で、特に南宋時代には都として栄え、マルコ・ポーロもここを訪れてその繁栄ぶりを絶賛したという。現代でも、中国における7大古都の一つに数えられる。観光の中心は市街の西側にある西湖(Xi Hu)で、この周辺に様々な風趣を持つ観光ポイントが点在する。中でも有名なものは『西湖十景(Xi Hu Shi Jing)』として古くから親しまれている。(最近『西湖新十景』も制定されたとのこと。)この『西湖十景』を追ってみるのが定石だろう。
 まずはUSD$50を417.73元に両替する。ホリデイ・インは西湖から約2.5kmほど離れているので、道端でタクシーを拾い、西湖の北東にある

『断橋残雪(Duan Qiao Can Xue)』
へ。(タクシーの基本料金は10元。)ここは、西湖を横切る
『白堤(Bai Di)』
の北側に当たり、雪が積もって融け始めると橋が折れているように見えるのでこの名があるそうな。もちろん、いまは雪なんか降っているわけもないので、晴天のもとで橋を撮影し白堤を西へ歩き始める。白堤は、白楽天が修復した堤なのでこの名があるそうな。西湖を分けた両岸に柳が植えられており、天気も素晴らしく、そよ風が心地好い。岸と水面にはほとんど高低差がなく、フェンスなどもつけられていないので、うっかり岸辺を歩くと落ちかねないのだが、やはり水際が好い。西湖の
対岸
には市街地が見える。それにしても実に多くの大小様々な船が行き交っている。声をかけてくる船頭もたくさんいる。少し歩くと、西湖に面した月見台が見えてくる。『平湖秋月(Ping Hu Qiu Yue)』と呼ばれ、秋の名月が湖面に映り込む様が美しいとされている。しかし、今は昼間だし、どうせ夜に来たところで月は欠け始めているので、今日は
を撮影するだけにする。さらに歩くと
『楼外楼(Lou Wai Lou)』
というレストランがある。100年以上の歴史を誇る老舗レストランで、杭州料理を名物にしている。機内食が少なかったこともあり、15:00とはいえ空腹だったので、入ってみることにした。


 今回の旅は、いくつかの点で今までの旅と異なっているのだが、その一つが『食べ歩きの楽しみ』である。これまで、食の選択肢がほとんどないことが多かったのだが、ここ杭州には数々の名物料理があり、レストランも多く、何処で何を食べようか、嬉しい悩みが尽きないのである。まずは、

『東坡肉(Dong Po Rou)』
と蝦仁炒飯を注文。東坡肉は、豚の脂つき肉を醤油・氷砂糖・紹興酒で壷煮込みにしたもので、甘辛い汁の中にねっとりとした(ただししつこさや脂臭さは全くない)豚肉が納まっており美味。量が少ないのが難点で、もっと大きければメインに十分なると思うのだが。蝦仁炒飯も塩を基調にしたあっさり味でなかなか。2品で28.6元と、伝統を誇るわりには庶民的で、また行きたい店だ。


 西湖を見晴らすと、

島と対岸の山
が絶妙なバランスで目に入ってくる。しかし、日が傾いてきて、西湖の西岸では写真を撮りづらくなってきた。時間はたっぷりあるので、来た道を引き返して断橋残雪へ戻り『断橋(Duan Qiao)』バス停の路線表示を調べたのだが、行きたい方向へ行く路線がない。再びタクシーを拾い、西湖天地へ向かった。
 『西湖天地(Xi Hu Tian Di)』は、西湖の東岸に最近出来た、複合レジャー施設といえばいいのだろうか。竹林や柳などをベースとした
公園
に最新流行のショップが隠れて配置されている
夕陽と西湖
のコンビネーションが美しい。さらに南へ歩くと
『柳浪聞鶯(Liu Lang Wen Ying)』
。ここは西湖に沿った公園になっており、柳の下で鶯の鳴き声を聞くことが美しいとされている。最近整備されたのか、造りは整然としていて清潔だが、所々にある建物は伝統的な様式を踏襲しており、流されている音楽も伝統音楽だ。鶯こそ鳴いていないが、風にそよぐ柳の下を歩くうちに気持ちが安らいでくる。今までの旅行は一種の興奮と緊張の中で楽しんでいたのだが、ここ杭州では安らぎを楽しめる。陽はますます傾いていく。(
)さらに南へ歩くと山の上に大きな塔が見えた。最近再建された雷峰塔だ。(『地球の歩き方』には『現在はない』とあるが。)この塔と夕陽のコンビネーションが
『雷峰夕照(Lei Feng Xi Zhao)』
となるのだろう。陽射しは強くはなく、あくまでも優美。この塔には明日以降に改めて行ってみたい。
西湖の周辺
は真新しく整備されたらしく小綺麗だが、中国的な伝統様式が最大限に活かされており、近代建築からは得難い安らぎを得られる。
 日も暮れたので、北へ戻ることにする。途中、河坊街(He Fang Jie)に昔ながらの街路が残っていると聞いていたので向かってみたが、昔ながらの集合住宅街に入ってしまったので、元の道へ戻った。後で調べてみると、どうやらさらに東へ行く必要があったらしい。かなり歩いて疲れたのだが、遅い昼食を摂ったため空腹にならないので、柳浪聞鶯にいくつかある茶館の一つ<
『一茶一生(Yi Cha Yi Sheng)』
に入り、
『西湖龍井茶(Xi Hu Long Jing Cha)』
をもらう。龍井茶は、中国の緑茶(Lu Cha)の中でも最も有名なものの一つだ。『四絶』(茶の色・味・香り・形の4つが絶品であるの意)とも呼ばれる。すっきりして美味しい。この茶葉もぜひ買いたいものの一つだ。夜、テーブルのランプだけで屋外で茶を飲むのも好いものである。茶菓子もつけて38元。


 19:00を廻ったしホテルへ戻ろうと、西湖天地からタクシーに乗ったのだが、このタクシーが曲者だった。ホテルへ戻れといっているのに、何度も『マッサージはどうだ?』と薦めてくる。手つきをみれば、買春の誘いであることはすぐに分かる。何度も断ると、西湖沿いの通りから何本か入ったところで停められ『カネは要らないからここで降りてくれ』といわれてしまった。たかられなかったのは不幸中の幸いだが、さて困った。2台目に停めたタクシーにも『こんなところには行かない。』と乗車拒否されてしまい、仕方がないので地図を見ながら歩く。よくみると、真新しくネオンサインも華やかなビルの合間に昔ながらの住宅がひっそりと息づいている。照明は薄暗く、建物の破損も激しく、まさに発展に取り残されたといった風情だ。綺麗に整備された観光地のすぐ近くにあるだけに、何かを考えさせる光景である。3台目のタクシーは素直にホテルに向かってくれた。
 今日は街の様子を見ることを目的に歩いたのだが、どうやらガイドブックの情報はもちろん(『地球の歩き方』の情報は少なすぎる上に古い)、WWWで調べたバス路線などの情報も違っているようだ。といって、ホテルにあるレンタル自転車を使うのも、交通事情やその他の交通手段を使えないことを考えると賢い手段とは言い切れない。結局、歩きながらバス路線を調べつつ、多少金はかかるがタクシーや西湖周遊カート(電動カートが走っている。西湖周辺を4区間に分け、1区間あたり10元。ANAハローツアーの広告をつけている車が多い。ANAの杭州に対する熱心さには感心する。WWWサイトの情報量もJALとは大違いだ。)を組み合わせるのがベストのようだ。(ただし、夜のタクシーには気をつけねばならないのだが、何をどうしろと…)
 ホテルに戻ってTVをつけると、抗日戦争の映画を放送していた。日本兵の拷問シーンがなかなか凄まじかった。


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