ホテルのフロントに『杭州旅游指南』というパンフレットが置いてあるのを見つけた。全て中国語のみだが、通りの名前の入った詳細なマップがありとても重宝。観光名所ばかりでなく、料理の名前なども記述されており、これさえあれば他のガイドブックの類は要らないかもしれない。女子十二楽坊が写っている写真も掲載されている。
六和塔(Liu He Ta)に行くため、ホテルの前にたむろしていた運転手の中から人の良さそうなのを呼ぶ。と、運転中に『龍井には行ったか? いいところだぞ。』としきりにいう。こいつがここまでいうなら行ってみても良かろうと思い、行き先を龍井に変更。道はだんだんと山道になっていき、曲がりくねりながら登っていく。箱根にでも来たかのようだ。山肌には茶畑がしつらえられ、道筋には茶葉を商う店が増えていく。ここが龍井なのだろう。運転手は、車を『老龍井御茶園』に停めた。龍井は道が狭く曲がりくねっており、バス停を探すのもタクシーを拾うのも難しそうに思えたので、待っていてくれるように頼む。何とか通じたようだ。今まで遊び半分で学んでいた中国語だが、少しずつ使えるフレーズが増えてきた。
老龍井御茶園に入ろうとすると、おっさんに呼び止められた。何かと思ったら『チケットを買え』と。10元を支払って改めて中へ。ここには『龍井問茶(Long Jing Wen Cha)』の看板がある。謂れは良く分からないが、茶館のような建物がある。(
・・)さらに中に入ると、龍が水を吐き出す泉があった。といい、これが龍井という地名のもとになったらしい。(後で調べると、旱魃のときにもこの泉だけは枯れなかったので、中に龍がいるということで龍井と名づけられたのだとか。)隣にはいくつかテーブルがあり、トランプや麻雀に興じる人たちがいた。車に戻ると、少し走って今度は寂れたドライブインのようなところに停まった。営業しているとは思えなかったのだが、茶葉を商う店らしい。しまった、はめられたか? 店には英語を話せる女性スタッフがいて、2種類の茶葉を出してきた。良い方だという茶葉で茶を淹れる。まず湯を通し、香りを嗅いでみるようにいってくる。茶の良い香りがやや強く漂ってくる。次いでコップに茶葉を入れ、湯を汲んで出してきた。飲んでみると、龍井茶で時々感じた鋭さが全くなく、確かに美味しいお茶だ。さて、いよいよ値段を言い出してきた。500g単位で600元、ただし1.5kg以上買えば割り引くそうな。500g以下では売らないと言う。悪い茶とは思えないが、茶葉の良し悪しを判別できるようになるまでにはまだまだ修行が要るだろう。女性スタッフの態度は控えめで、ずるそうな感じは受けない。(美人ともいえないし。)これまでに確認した相場から考えても高い部類に入るが、一般的な茶葉は缶などに入って売られていても高い茶葉は500g単位で売られていたのも事実。龍井は茶葉を多めに使うので、友人などに分ける分を含めれば多すぎるというわけでもない。騙されている可能性も少なくないが、クレジットカードを使えるというのが決め手になり、思い切って500gほど買うことにした。その場で茶葉を量って袋に入れ、さらにビニールで密閉してくれる。茶の袋には『獅峰龍井茶(Shi Feng Long Jing)』と書いてあった。(帰国後に調べたところ、龍井茶でも最高級に分類される茶だそうな。)
茶を喫し終わり、さて支払おうとすると、別の男性スタッフを指し『彼の後についていってくれ』という。再びタクシーに乗り、龍井を走り抜ける。恐らく、龍井は茶葉を作るよりも茶葉を売ったほうが金になる、ということに気づいてしまったのだろう。山間の小さな村と茶畑のコンビネーションが美しいだけに寂しくなる。これを読んでいる方には『龍井には気をつけろ』と申し上げたい。茶について詳しく知らず、中国人の商売っ気を断固はねつけられる強さを持たないのに龍井に行くのであれば、誰にもいわずにこっそりと行くべきだ。(私は良い茶葉と思ったので買ったつもりではあるが、恥さらしになるかもしれないことをあえて書いておくことにする。)10分ほど走ると『浙江賓館』に入り、そこの土産店で支払うようにいわれた。カードを通し金額を確認してサインをすると、スタッフが『真珠はいかがでしょうか?』といってくる。いい加減にしてくれ、といいたくなる。断ってタクシーに乗り、今度こそへ。15分ほどで到着し、ここでタクシーと別れる。メーターを見ると70元だった。(昨日の花港観魚までが20元だったので、距離や待ち時間を考えると妥当なところか?)
ところで、杭州は国際的なリゾート都市を目指しているのか、あちこちに英語の表示がある。が、六和塔を"Six Harmonies Pagoda"と表記しても地元の人が誰も分からないので意味がない。ピンインだけをつけてくれたほうがよほど実用的だ。ただし、公衆トイレの整備状況は見事。何処に行っても必ず設置されており、しかも清潔に使うことができる。
は、銭塘江という大河の畔に立っている。銭塘江の氾濫を鎮めるために建てられたのだそうな。周囲が公園となっており、20元を支払って中へ。少し階段を登ると塔の麓に出る。塔を登るにはさらに10元が必要なのだが、さすがに気力が失せたので塔を周囲から眺めるだけにした。
公園の入り口に戻ると、さっきの運転手がまだたむろしていたので、見つからないようにこっそりと『六和塔』バス停へ。西湖の北側へ出ようと思ったのだが適当なバスがないので、まずは4路で『蘇堤』バス停へ。ここで路線を調べると、Y2路(なぜかサンフランシスコのケーブルカーのようなデザイン)で断橋残雪のある『断橋』バス停に出られることが分かった。バスに乗った後に今朝手に入れた旅游指南を見ると、その一つ手前の『玉泉(Yu Quan)』バス停の近くにある曙光路に茶館がいくつかあることがわかったので、玉泉で降りた。しかし、曙光路を歩いて茶館を眺めてみると、どこもいまいちぱっとしない。いったん『岳廟』バス停まで歩き、再びY2路で断橋バス停へ。ここから西湖を時計回りに歩き、有名な茶館であるに入った。内装は意外に特徴がなくやや幻滅。西湖の畔にあるのが自慢らしいのだが、窓が閉められているので風も入ってこない。茶はを注文した。茶に付く点心としてたくさんの豆やドライフルーツが出される。豆類は苦手なのでちとつらいなぁ…と思っていると、さらに麺類や粽なども出された。これで満腹になってしまい、茶代の80元は安いものではないが昼食も取れたのでまぁよしとしよう。
ここから船に乗って、西湖十景で最後に残った『三潭印月(San Tan Yin Yue)』を観に行くことにした。乗船代は45元だが、三潭印月の入場料20元が含まれているとのこと。まず『湖心亭』という島で降ろされた。三潭印月に行くためにはここから別の船に乗らねばならない。10分ほど待つと船がやってきた。途中、西湖の西岸に眼を向けると、
が美しい。恐らく、はこういう景色を指すのではないだろうか。10分ほどで三潭印月へ。ここは、西湖の中に造られた人工島なのだが、島の大部分を(これまた人口の)池が占めているため、丸に十字の形をしている。(島津家の家紋みたいな形といえばよかろうか。)とりあえず外周部を歩いていると、西湖の水面に3つのが立っている。あれ? 看板を見るとこの灯籠が三潭印月ということになっているなぁ。月夜にこの灯籠をみると月が3つあるかのように見えるのだそうな。灯籠の周りにはたくさんの小型船がおり、なかなか撮影タイミングをつかめなかった。この島からは、岳廟や花港観魚にも行けるのだが、もと来たところに戻ることにした。
再び西湖の周囲を歩く。人がたくさん集まっているところがいくつかあったので行ってみると、二胡の演奏にあわせてカラオケが行われていた。西湖天地で茶でも飲もうかと思ったのだが、あるのは茶館ではなくレストランのように見えたので(スタバもあるけど)、伝統音楽と現代音楽が融合した音楽CDを買うためにその近くにある『元華商城(Yuan Hua Plaza)』に行くことにした。ここの地下に小さいながらもCDショップがあり、3枚のCDを計36元で買った。ところで、こういうジャンルなら女子十二楽坊を抜きにしては語れないように思うのだが、置いていなかった。杭州観光のイメージキャラクターを務めているのに…
西湖の東岸のバスのコツがまだ掴めていない。歩き廻ってみて、『西湖大道』バス停から8路で『呉山広場(Wu Shan Guang Chang)』バス停へ行き、昨日も訪れた清河坊を歩いた。昨日はテーマパークのようなどと思ったが、改めて歩いてみると悪くはない。(
・・) 『旅游指南』によれば、ここにはという茶館がある。スタッフが全員青い制服を身につけているのが印象的。スタッフが日本の雑誌に掲載された記事を見せてくれた。何でも、ここは溜めた雨水で茶を淹れるのが特徴だそうな。おいおい。まぁ、沸かしているから大丈夫とは思うが… の淹れ方も特徴的で、やたら注ぎ口の長いヤカンを使い、びしっとポーズをとって背中から注ぎ口を差回して湯を注ぐのだ。びっくりしてしまった。パフォーマンスばかりでなく、茶そのものも美味しい。もも、気分を落ち着かせてくれる良い茶館だ。
店を出て通りをぶらつく。何かいいものはないかと探しているのだが、どうも私の感性に合わない。シルク製品にしても、もっとシックなデザインであれば考えるのだけどなぁ。茶器も書も、ぴたっと『来る』ものを感じない。私の感性が良くないのだろうか?
『呉山公園』バス停に戻り、バス路線表記を見る。いくつかのバスが『延安路解放路口』バス停で停まることが分かった。恐らく、延安路と解放路の交差点だろう。『延安路解放路口』バス停でバスを降り、少し北へ歩いて、昨日も行った『知味観』へ。『旅游指南』のおかげで、ここの名物という『蟹の蜜柑煮』(ピンインは振られていないし、日本語にない漢字が使われているのでどう表記していいか分からない。『旅游指南』の日本語版には『蟹醸橙』とある。)を食べてみたかったのだ。すっかり気に入ってしまった東坡肉・杭州炒飯もあわせて注文する。もっとも、杭州炒飯は普通の炒飯だった。(美味しかったけど。)そしていよいよの登場である。オレンジの蓋を開けると、くりぬいたオレンジを器として、その中に蟹ミソ・蟹肉などをオレンジと酢で煮込んだものが入っている。オレンジのさわやかな香りが鼻をくすぐる。口にしてみると、オレンジと酢の酸味をベースに蟹の風味が漂う、なんとも不思議な味。味よりもむしろ香りを楽しむ料理のように思った。3点計で83元。
明日で杭州滞在も最終日。観光名所を追いかけることはせず、気ままに楽しみたいものだ。
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