Day 4 in Hangzhou

 このホテルの朝食は種類こそたくさんあるもののどれも不味い。しかし、コーヒーを持って巡回している小姐がお土産にしたいほど可愛いので全て許す。
 手持ちのRMBが160元となったので両替しようと思ったら、『RMBを切らしてしまったので12:00以降に来てください。』とのこと。いったん戻るのも面倒なので、食事などはクレジットカードで何とかしたい。


 今日は西湖のほとりでのんびりしたいので、まずは初日以来行っていない

断橋残雪
へ。月曜というのにぶらついている人が多い…仕事(学校)は? 白堤を
平湖秋月
のほうへ歩く。 ここから西湖を見ると、西湖の南西にある山並みが薄い靄の中に墨で描いたようでなんとも幻想的。(
)しばし見とれてしまう。そちらの方角には近代的な人工物がほとんど眼に入らない。そのように設計したのだろう。さらに西へ歩き『楼外楼』を過ぎる。と、いきなり大きな建物が現れた。なんとここにも『楼外楼』の看板がある。建物のつくりからみてこちらが本物のように思える。すると、初日に行ったほうは支店だろうか、それとも偽者だろうか… いずれにせよ、これで昼食は決まった。(カードを使えれば、だけど。)
 さらに西に行く(道の名は『孤山路』(Gu Shan Lu)となっている。)と、『西冷印社(Xi Leng Yin She)』と掲げられた小さな入り口が現れた。ここは、金石篆刻を専門に研究する学術団体なのだそうな。中に入ると、小さな建物が2棟。あら、こんなものか?と思ったら、これまた建物の裏に上への階段がある。ここも、弧山に添った形で上にいくつかの建物があるようだ。伝統様式を踏まえつつ、竹林なども絶妙に配されていて美しい。(
) なぜか
石塔
のようなものも立っているのだけど、これは何だろうか? 中には印鑑の博物館のようなものもあり、印鑑マニアにはたまらないだろう。印鑑に使う石の展示もあり、中でも最高級は鶏血石というそうな。何とも言いようのないネーミングセンスではある。販売も行っていて、最も高い石は43万元だった。(JCBカードが使えるような表示もあった。)
 西冷印社を出て、さらに西に行くと蘇堤の入り口に出る。
蘇堤春暁
が西湖十景の第一番らしいのだけど、私としてはここ孤山からの西湖の眺めを推奨したい。静かに水を湛える西湖と、低いながらも絶妙の稜線の組み合わせを見せる南西の山並みはまさに一幅の絵である。私ごときの腕ではとても再現することは出来ない。


 11:30という絶妙な時間となったので

『楼外楼』
へ。ここに限らず、杭州の大きなレストランではたいていチャイナドレスの小姐が迎えてくれる。訊いてみるとカードを使えるとのことなので安心して中へ。メニューを見ると、フォントや値段が先日の『楼外楼』と同じ。恐らくあれは支店なのだろう。杭州料理の中でまだ試していない『叫化鶏(Jiao Hua Ji)』(こじき鶏と呼ばれる。鶏の中に詰め物をして泥や葉で包み蒸し焼きにした料理。)を注文しようと思ったのだが、隣のテーブルでまさに食べているのをみるとけっこう大きい。これを一人黙々と食べているさまを想像すると泣けてきたので、東坡肉・西湖醋魚・刀切(Steamed Ban; 海外の中華街などで安く手に入る白い饅頭の皮みたいなアレのことだろう。)とした。まずは
西湖醋魚
。見た目は『知味観』と同じだが、『知味観』で感じた酢のつんとくる酸味がなく、マイルドな甘酸っぱさに仕上がっていた。続いて
東坡肉
。先日の『楼外楼』と同じく、小さな刀切がついてきた。別々に食べようとすると、小姐が箸を取って東坡肉の半分を挟んでくれた。なるほど、東坡肉のタレが染み込んで美味しい。こちらも、『知味観』に比べて醤油の塩味が強くなく、全ての味が融けあってまろやかな味に仕上がっているように思えた。この2品については、私は『楼外楼』を支持する。最後の刀切のところで、品切れといわれてしまったので、小籠包を注文した。(余談だが、以前『その発音では、笑う・籠・抱きつく に聞こえる。』といわれたことがある。向こうも大目にみてくれたのだろうが、この一連の会話が通じたことはとても嬉しかった。)4つくらいかと思ったら8つも入っていた。こちらの味はごく普通。全て美味しいのだけど、一つずつ持ってくるので、一つの料理をずっと食べ続けることになり、茶でも注文(無料で出してくれるわけではない)しておかないと味覚が疲れて味を感じなくなる。茶代込みで64.8元。昼飯を食べ過ぎたので、夕食は軽いものにせざるを得ないが、満ち足りた気分。


 午後は西湖の東岸で過ごそうと思い、『断橋』バス停からY9路バスに乗った。Y9路バスは西湖を時計回りに走るバス(ただし、始点と終点があるらしいので、乗りっ放しは出来ないと思われる。)で、他のバスに比べて5元と高いがオープンバスもどきになっている。『銭王祠』バス停で下車し、南山路を南へ歩く。このあたりに、日本の茶の本でも読んだ『西湖国際茶人村』があるはずなのだが、柳浪聞鶯の中を何度か探してもなかったので、南山路沿いを探すことにしたのだ。と、右側(柳浪聞鶯側)にようやく

入り口
を発見。さっそく入ってみた。
 まず、内装はシックの一言。(
) まさにこういう雰囲気の茶館を探していたのだ。他に客もおらず、流れていたピアノのBGMも止まり、スタッフもどこかに行ってしまい、静寂の中で
西湖龍井
を頂く。雰囲気と香りと味が全て感覚に作用し、何とも安らぐ。全てが完璧だ。時間の経つのを忘れてしまう。杭州に来た甲斐があったというものだ。(これまでに、既に十分に報われているのだけど。) こういう時間を今後も持ちたいものだ。眠ってしまいそうになるのだけど、最終日の今日は何としても西湖の夕陽を見たい。名残惜しくはあるが、スタッフを呼んで60元を支払った。素晴らしい茶館だった。
 
柳浪聞鶯
に戻り、柳の下を歩く。水辺の柳というのは何とも柔らかい印象を与えるものだ。日は徐々に傾いていく。陽光もあくまでも優美で、柔らかい稜線とも相まって浪漫チックな印象を与える。そういえば、杭州に着いてから知ったのだが、この西湖は中国古典ロマンスの舞台ともなっているのだそうな。この風景をみると納得できる。


 陽も暮れてしまったが、全く空腹感を覚えない。何か口にするとしても点心くらいで十分だろう。伝統料理店ばかりというのも一面的過ぎるように思えるので、最後は杭州の新しい面をみるべく、『西湖天地』の中にあるダイニング『湖蝶 ZEN』に入ってみた。青山あたりにあっても不思議ではない

内装
だ。ハロゲンのスポットライトを多用した照明は、夜になると真価を発揮する。荷香珍儒珠鶏(要するに粽)・広東雷沙湯園(砕いたピーナッツをまぶした白玉団子。中に液状の黒胡麻餡)・茉莉花茶を注文。どれも驚くほど美味いというわけではないが、こういう店で点心を出すことに何となく安心。恐らく、若いカップルがたくさん訪れることだろう。それにしても、万国共通で同じような内装の店が現れるものだなぁ。3点計で44元。
 店を出るとすっかり夜。夜景撮影用のミニ三脚とシャッターリモコンを持っていたのに使う機会がなかったので、西湖の夜景を撮ってみようかと思ったが、東岸の一部以外に人工の建造物がないせいか真っ暗。もっとも、これなら月を美しく見られることだろう。
西湖天地の夜景
を撮ってみた。4秒もシャッターを開けていても、手ブレもないしピントもあっている。ただ、ミニ三脚は20cmくらいしかないので使いづらい。
 明日のピックアップは10:30なので、何も出来ないだろう。西湖に近ければ朝の散歩を出来たのだが… 次に来るときは西湖の東岸近くのホテルを取りたいところだ。

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