例年なら、たくさんの旅行先候補の中から迷いに迷いつつ、GW前には旅行先を決めてじっくりと旅の手配を進めるのだが、今年はいろいろあって何事にも興味が失せてしまい、旅に出る気分にもなれなかった。6月に入っても一向に気分が乗らず、取り止めることも真剣に考えた。しかし、旅行に出ることで、硬くなってしまった心がほぐれ、自分の気持ちもいくらかでも変わるのではないかと思い直した。そこで、どうせなら日本とは全く違う風景に晒されてみようと、『日が没するところ』モロッコに行くことにした。手配は、ファイブスタークラブの個人旅行ツアーを使うことにした。
モロッコ行きを決めた後に調べてみると、確かに古い迷路のような街が残っているものの、全体としてはリゾート化されつつある観光立国となっているらしい。もっとも、今の状態であまりタフな状況になっても対処に困るので、かえって好いくらいだ。あとは、旧市街で次から次へと出てくるであろう物売りやガイドの類をいかに捌くか、である。
出発当日を迎えても、相変わらず心に蓋があるような感覚で、旅行気分になれないまま、成田空港へ向かう。12:05発のAF275でまずはパリへ。機内で寝起きを繰り返しているうちに、ようやく気持ちが旅行モードになってきた。17:20(時計が7時間戻る)にパリ着。ターミナル2Cに着いたので、まず乗り継ぎカウンターへ出向いて、カサブランカ行きのフライトへの乗り継ぎ手続きと帰りのフライトのリコンファームを依頼する。前者は成田で既に完了しており、後者も航空券のステイタスが"OK"なので不要だそうな。4年前の一件もあるし、若干の不安が残るが、別のカウンターで訊いても同じ返事だったので仕方がない。
ターミナル間乗り継ぎバスでターミナル2Fへ。わずか30分でここまで出来た。ここは日本へ向かうフライトが出るところなので日本人がたくさんいる。カサブランカ行きAF1696の案内が始まる時刻まで時間をつぶす。20:25になり案内が始まり、機体まで運んでくれるバスに乗るが、なかなか出発しない。21時間際にスタッフから『機材に問題が発生し別の機材に替えるのでいったんターミナルに戻ってください。』とのアナウンス。初っ端からこんなトラブルに遭うとは。定刻の出発時刻は21:05なのだが、それを過ぎてもターミナルでひたすら待つ。22:15になりようやくバスへの案内が始まる。機体に乗り、22:45にようやく離陸。眠いし、空腹だし、疲れたし、この遅れは非常に痛い。乗客数が少なく、3人がけの椅子に横になって眠れたのだけが若干の救いだ。
約3時間のフライトで、23:30(時計がさらに2時間戻る)にカサブランカ・モハンマド5世空港に着陸。深夜でもあり、空港は空いていて、約30分で入国審査・手荷物受け取り・税関審査をクリア。出口のところで待っていてくれたドライバーと合流し、まずUSD$82を695ディラハム(以下DH)に両替して車に乗る。アフリカの地に初めて足を踏み入れたことになるが、深夜で疲れていてこの時は全く感慨なし。車は高速道路を走っていく。広告もぽつぽつあり、アラビア語でも表記(ほとんどがフランス語も併記)されている以外は、ごく普通の都市という印象だ。約30分ほどでカサブランカ市外へ入る。人通りこそないものの、街にはゴミも落書きもないし、窓に金網や鉄条網があるわけでなし、治安はそこそこ良さそう。00:40に、本日の宿"Kenzi Basma Hotel"に到着。ドライバーから、明日以降のホテルのバウチャーと列車の切符を受け取り部屋へ。荷物を持ってきてくれたポーターからチップを要求され、1枚しかない5DHコインを渡す。この国は何かというとチップらしいので、小銭を用意しておかねば。洗顔のみでとにかく眠る。
明日は、08:15発の列車でフェスまで約4時間半の行程。久しぶりにタフな行程だ。初日からトラブルに遭ったが、まだしも行きだったのが救いであり、むしろ厄払いになった、と考えたい。