近くのナイトクラブだろうか、22:00頃からガンガンに音楽をかけるのでうるさいことおびただしい。それでも眠れてしまうのは、日中で疲れているからだろう。08:00に起床、朝食を摂って09:00に出発。今日は、近郊の観光ポイントのうち、リヴァーディア宮殿と『チェーホフの家博物館』を観るつもりである。
LPによれば、リヴァーディア宮殿に行くには、ホテル近くの
から26番、27番、32番、47番のいずれかのマルシルートカに乗ればいいらしい。5分ほど待つと、47番がやってきた。『りばーでぃあ・どばれつ?』("Ливадия Дворец";恐らく、正しくは"Ливадийский Дворец"です)と運転手に訊くと、確かにリヴァーディア宮殿まで行くらしい。乗ろうとすると、手振りで車を廻すから向こうから乗れという。市場の反対側に47番の標識があったので、そこから乗る。3UAHとのことだが、4UAH払ってもお釣をくれなかった。
09:15に出発。車は15人乗りのマイクロバスで、冷房がない(窓は開くが)のでとにかく暑い。曲がりくねりながら山道を登っていく。車に弱い人なら酔いそうだ。15分ほどで、左側に”LIVADIA PALACE"(珍しく英語)の標識がある分かれ道があった。そこを過ぎたところで車が停まったので降りようとすると運転手から『まだ先だ』といわれた。5分ほどで、停留所も何もないところで車が停まり、『ここだ』といわれたので下車。
さて、ここから宮殿までどのように行けばいいのか、ということだが、…LPに書いてあることは全く正しかった。まず、道を渡ってに入り、左手にあるピンクの建物の横にある小さなを降り、左手にあるを降りて少し行くと、正面に保養所らしき建物があるに突き当たるので、それを左手に道なりに降りていく。しばらく行くと、右にがある(分岐点に土産物店あり)のでそれを辿ると、宮殿の正面に出た! 思ったよりも簡単に辿り着けて思わずガッツポーズ。
は、もともと帝政ロシア最後の皇帝ニコライII世の夏の別荘として建てられたものだが、この宮殿を歴史的な遺産としているのは、1945年にヤルタ会談の会場として使われたことだろう。第二次大戦後の日本の運命、そして世界史に大きな影響を与えた場所として、ぜひ観ておきたかった。宮殿の外観は、モスクワやサンクトペテルブルクで観たロマノフ王朝の遺産と比べるとやや質素に思える。黒海を見晴らす高台に位置しており、夏を過ごす場所としては最適だろう。10:00オープンらしいので、KACCAで並んで待つ。既に30人くらいがオープンを待っている。5分前にKACCAがオープンし、撮影料込みで25UAHを支払う。見学はツアー形式になっていて、20人くらいのグループで10:05から見学開始。が一生懸命説明をしてくれるが、ロシア語なのでさっぱり分からない。ここの説明は理解したかった。
門を入ると、いきなり米国・イギリス・ソ連の国旗が乗せられたがある。ここがまさに会談の行われたで、テーブルと椅子は当時を再現したものとのこと。ここで、どのような駆け引きが行われたのだろうか。テーブルの奥には大きなテーブルがしつらえられた。どちらの部屋も、壁や天井に施された漆喰細工が素晴らしい。さらに次の部屋は木目調のシックな部屋で、ルーズベルトとスターリンが会談を行ったがある。ここでソヴィエトの対日参戦が同意されたらしい。複雑な気持ちになる。合意文書が署名されたに入ると、いっそう歴史の重みを感じる。
さて、ここからはニコライII世一家を偲ぶ内容となる。まず、アラビア風の装飾が施された
を観て、2階に上がる。まず案内されたのは、緑を基調とした内装の部屋。シックで、それでいて豪華で、とても好い部屋だ。窓からは輝く海が見渡せ、とても美しい。その前にある大きな机で、ニコライII世が執務を行ったのだろうか。ロマノフ王朝というと、とかく必要以上にごてごてと飾り立てて豪華だけど食傷、という感じだったのだが、この部屋はとても好い。立ち去り難い魅力があった。(・・・)
いくつかの部屋を案内されるが、それぞれに内装のテーマが全く違っていて、変化に富んでいる。このあたりがロマノフの面目躍如、といったところか。(・・・・) 各部屋のバルコニーから見渡す海も劣らず美しい。(・) あちこちにの写真が飾られている。一家はこの宮殿をとても愛していたらしい。
約1時間ほどで見学ツアー終了。外観よりもかなり広かった。さて、ここの土産物店には期待していたのだが、ロシアでどこでも売っているようなマトリョーシカや木製の民芸品、安っぽい土産物ばかり。ヤルタ会談に因んだTシャツでもあれば、と思っていたのだが… 購買意欲をそそるものがないので、何も買わずに出た。
出口の正面に、"Sunny Path"と名づけられた小道がある。ニコライII世の医師が薦めてつくらせたものだそうな。なるほど、木立の中、木漏れ日を浴びながら、左手に海を眺めて歩くだけで、下手な健康法よりもよほど体に好さそうだ。心身両面に、静かにエネルギーが与えられていくような気がする。(
・)
時刻は11:30, 早めの昼食を摂るというのも悪くないのだが、あいにくこの近くのカフェはまだ準備中。いったん街に戻ることにして、元の道を登っていく。(この登りは意外にきつい。) マルシルートカを降りたところで車を待っていると、5分ほどで34番がやってきた。手を上げて停め、運転手に『スパルタクまで行くか?』と訊くと頷いたので乗車。2.5UAH也。車内は既に満車で、立ち乗りである。カーブがきついので、手すりにつかまっていないと死ぬことになる。とにかく暑い。15分ほどで『スパルタク』バス停に到着、下車。助かった…
さて、まだ空腹を感じないので、このまま『チェーホフの家博物館』に向かうことにした。この停留所から8番のマルシルートカに乗ればいいはずなのだが、なかなか8番が来ない。15分ほど待ってやっと来たので、運転手に訊いてみたが『行かない』というので乗れず。何だか腹が立ってきたので、LPには『レーニン海岸通りから歩いて15~20分ほど』とあることでもあり、歩いていくことにした。
川沿いの道を15分ほど行くと、右手に保養所があり、その先に
という路地が右手にあるので、それを辿る。ひたすらを登り(けっこうきつい)、最初の交差がキーロフ通りなのでそこを左に行く。(LPの地図と異なり、交差の先にも道があるが、そちらに行ってはいけない。もっとも、周囲の家並みがなかなかなので、あえて行くのも好し。(・・)) 5分ほどで、左手に『チェーホフの家博物館』というがあるので、その横の階段を降りると、展示場となっている建物がある。20UAHを払って中へ。歩けないことはないが、ちときつい行程だった。
チェーホフは、晩年の5年間をここで過ごし、『三人姉妹』や『桜の園』などの有名な戯曲などをここで書いた。ロシア文学は難解でどうも読みこなせないのだが、チェーホフだけは例外で、学生時代から折に触れ読んでいた。というわけで、ここには是非来たかったのである。
展示館の内容は、写真や原稿など。ロシア語の説明しかないのでさっぱり分からない。むしろ、反対側にある庭のほうがメインだろう。チェーホフの好みか、いろいろな植物が植えられた中に、
と呼ばれるチェーホフの家が残っている。内装は当時のまま保存され、や、親戚の部屋、そしてを見学できる。チェーホフが今にも現われそうだ。残念ながら2階は見学できないので、ダーチャを出て庭へ。
『桜の園』を初めて読んだ時は、過去に囚われて現実に対処できないラネーフスカヤ夫人やガーエフを理解できず、ここがまさに喜劇なのだと思っていた。しかし、年を重ねるにつれ、少しずつこの2人のことも理解できるようになってきた。チェーホフは、ここでどんなことを考えて『桜の園』を書いたのだろうか。
時刻は13:30, さすがに空腹を覚えたが、ここではどうにもならないので、街へ戻ることにする。と、8番のバスがやってきた。停めて運転手に訊くと『スパルタク』バス停まで戻るというので乗車。たった1UAHで、5分ほどでバス停に戻った。やはりこのほうが楽だ。降りたところに
がいるので、今こそチャレンジ。200mlで1UAH也。飲んでみて、初めてを美味いと思えた。ほどよく冷えていて、ほのかな酸味が何とも爽やか。他にもクヴァス売りがいるが、ここがよく売れているのは、売り子がきれいなおねぇさんというのが大きいだろう。
夕食を早めに摂るので、今さらきちんと昼食を摂っても仕方がないので、ホットドックを買って食べる。そのまま、本日初のレーニン海岸通りへ。いつも通りの暖かさ、いつも通りの人出。
さて、そろそろ本気で土産を考えねばならない。ヤルタには名産がないと書いたが、実はワインが名産である。"MASSANDRA"ブランドのマスカットワインはなかなかいいらしい。といっても、私は酒がダメなので、両親向けの土産として買うことにする。レーニン像の横に直営店があるので、そこを目指して歩く。と、通り沿いの『ガストロノミー』という店(というよりアーケード街。高級そうな建物の中に、肉屋やチーズ屋やカフェなど庶民的な店が入っている。)の中に、菓子店を発見。チョコレートの詰め合わせを売っていたので、義理ある筋向けのチョコレートをここで購入。パッケージがキリル文字で読めないのがポイント高い。"MASSANDRA"直営店では、予定通りマスカットワインを購入。好い物なのかどうかは分からないが。他には、買いたいと思えるものがどう探してもない。せめて、ヤルタらしいデザインのTシャツでもあればいいのだけど、このままでは自分用の土産はないかもしれない。
いったんホテルへ戻り、買った物を置いて再度外出、海岸通りへ。途中でまたもクヴァスを飲んだ。病み付きになりそう。発酵飲料なので、わずかにアルコールが入っているのが難点だが。(この程度でも私には効いてしまう。)
今日の陽射しは、昨日よりも少し強いのか、少しだけ灼けるような感覚を覚える。波も少しだけ強い。(といっても、子どもが喜んでいるレベル。) 木陰のベンチを見つけて、青い海を眺めつつ、時々そよぐ暖かい風に吹かれつつ、またもうたた寝。
ぽつりと雨が降り始めた。と、あっという間に強い雨に。
から一気に人が消えた。折り畳み傘を差してしのぐ。5分ほどで小降りになったが、完全に降り止んだのは30分くらい後のことだった。雨が降ったせいか、地面から蒸し暑さが昇ってくる感じ。日が傾き始めた海岸通りをぶらぶら。もうすっかり見慣れた光景だけど、なぜか飽きない。
18:00になったので、夕食を摂りに今日も"Pelmennaya"へ。幸運にも、まだ数人しか客がいない。今日は、何かのヴァレニキ、ボルシチ、蜂蜜のブリンチキ、紅茶にする。21.90UAH也。ボルシチはコクがあって美味。特に工夫がしてあるというわけでもなさそうだが、庶民の美味さという感じだ。ヴァレニキだが、見かけはペリメニよりもさらに餃子っぽく、サワークリームがかけてある。さて、中身だが、…なんとラズベリー! ご丁寧に砂糖までかけてあり、甘酸っぱい。もっとも、ラズベリーもヴァレニキの皮も単体では美味しいので、これは食文化の違いだろう。とにかく驚いた。明日は、昨日のメニューにボルシチといきたいが、どのペリメニだか忘れてしまった。(4種類あり、1つはサワークリーム添えなので、1/3の確率である。) 19:00にホテルへ戻った。
明日はヤルタ滞在の最終日。まだまだヤルタにいたい。
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