Brasov

 06:45起床。身支度を整えて、07:30に朝食を摂る。年寄りの団体が入っていたのか、なかなかに騒がしい。その後、シギショアラの名残を惜しむために散歩。空気がひんやり、というより少々肌寒いくらいだ。静けさの中に、時を告げる鐘が響き渡る。ゆったりとして、立ち去り難いところだ。
 しかし、現実は容赦ない。ブラショフへ移動せねばならない。08:15にチェックアウトし、タクシーを依頼する。3分ほどでやって来たので、乗り込む。駅までなんと5分ほどで着いてしまった。料金もわずか5LEI. 往路での苦労はなんだったのか…


 シギショアラの

は真新しく、トイレも清潔。時刻表の掲示もプラズマディスプレイを用いている。乗車予定のR371は2番線から出る。(といっても、1・2・4番線しかない。) この列車は、ウィーンからブダペスト経由でブカレストに向かう列車らしい。ヨーロッパを鉄道で巡る旅をしてみたいなぁ。
 09:00に
プラットフォーム
へ出て、列車を待つ。4番線に列車が入ってきたが、これは違う。09:18に2番線に入ってきた列車は3両編成。多分違うと思ったが、念のために車掌に確認しておく。さて、この後は待てど暮らせど列車が入ってこない。何やらアナウンスが流れているが、ルーマニア語でさっぱり分からん。バックパッカーを含めた乗客も待ちの態勢なので、恐らく遅れているのだろう。外にいると、風が冷たく感じる。長袖を着ていてちょうどいいくらいだ。


 09:50にようやく列車が入ってきた。指定された2号車の35番席に入る。今回はコンパートメントではない。09:55に発車。さらばシギショアラ。これから約2時間の行程である。窓も開かないので、車窓の風景を撮影することも出来ない。ノートPCを出して、ここまでの旅行記をつけておく。


 11:50にブラショフ駅に到着。結局、約1時間の遅れとなってしまった。ここには半日しかいないので、この遅れは痛い。さて、ブラショフ駅はホテルのある旧市街から離れたところにあるので、旧市街までバスかタクシーを使わねばならない。声をかけてくるタクシーの運ちゃんの面構えがどうも気に食わないので、バスのチケット売り場があっさりと見つかったこともあり、『地球の歩き方』にしたがってバスで行くこととした。1回乗車券を1.5LEIで買い、4番のバスに乗る。駅の周囲は見慣れた面白みのない社会主義的な街並みだ。駅を離れるにつれ、徐々に昔の建物が現われてくる。15分ほども行くと、左手に大きな公園が見えてきた。隣に立っていたおねぇさんに地図を見せながら現在地を確認すると、なんとこの人が流暢な英語を話すではないか。次のバス停が大きな停留所で、そこから歩けばいいとのこと。なるほど、公園を廻り、エロイロール大通り(Bd. Eroilor)の端にある停留所に停まった。ここからならばとても分かりやすい。これはツイていた。
 路面はきれいに舗装されていてとても歩きやすい。天気は今日も快晴、風はシギショアラよりもひんやりとしている。歩かなければ汗をかくこともなさそうだし、長袖を羽織っていたほうがよさそうだ。10分ほど歩くと、メインストリートである

レプブリチ通り
(Str. Republicii)に出る。ここを少し行ったところに、本日の宿である"Hotel Coroana"がある。12:40にチェックイン。このホテル、ブラショフ最古のホテルという触れ込みだけあり、エレベーターなどがとにかくぼろい。『風呂がゆったりとしている』とのことだったが、なぜかバスルーム(バスタブではない)が妙に広く造られている。その代わりといってはなんだが、シャワーカーテンがない。うーむ…


 13:00に観光開始。さて、ブラショフ観光の最大の目玉は、近郊にある、ドラキュラ伝説のモデルとなったブラン城である。ただ、ブラン城へ行くには、片道1.5~2時間程度をみなければならず、半日の滞在時間では他のことが出来なくなってしまうので、当初からブラン城を諦めて、旧市街を散策することとしていた。(もっとも、ブラン城自体、ヴラド・ツェペシュとの関連が薄いうえ、がっかりさせられるという噂もあった。)
 レプブリチ通りを中心部へ向かって歩く。ここは歩行者天国になっていて、両側にはリニューアルされた古い建物が並んでいる。これらの建物が、カフェやファッションショップや携帯電話店として使われていて、とても活気がある。カフェの大半は、通りの中央にオープンシートを出しているので、写真を撮ろうにもなかなかアングルが決まらない。とにかくまず軽めに昼食を摂ろうと、半ばにあるカフェに入った。と、食べ物はクレープ類しかないらしい。なぜか、昨年来クレープに縁がある。ところで、店員のおねぇさんが、英語で書いたメモを渡してきた。見ると、『あなたの国の言葉で"I Love You"を何というのか教えてください。』とある。もちろん、ちゃんと書いて教えてあげた。そしてこの後、このおねぇさんが私にその言葉を囁いてくれる…などというイベントが発生するはずもなく、お勘定を払ってにこやかに店を後にしたのであった。コーラをつけて15LEI也。(



 通りの端には、中心に教会を置いた

広場
がある。ここもすっかりリニューアルされ、ドイツの観光地にいるような雰囲気だ。広場の左手に、イタリアンレストランが3軒並んでいる。ブカレストのドライバーが、『ブラショフにはイタリアンレストランが3軒並んでいるところがある。パスタを食べたいならそこへ行くといい。』と言っていたのを思い出した。今日はここで夕食を摂ることにした。
 旧市街をさらに行くと、
スケイ門
(Poarta Schei)がある。昔、この門がドイツ人居住地区とルーマニア人居住地区を分けていたとのことだ。何処にでもこういう門があるものだ。さらに10分ほどいくと、
聖ニコラエ教会
がある。ルーマニア正教の教会だそうな。今まで見てきた教会とは少し違った様式である。


 再び

スケイ門
を潜り、旧市街の反対側の端へ行ってみる。この通りは、レプブリチ通りのように賑やかではないが、重厚さがあってこれはこれで好い。(
) 通りの端には、スター百貨店というデパートがある。ここで土産を買えないかなぁ…と思っていたのだが、ここにも目ぼしい物はなかった。ちなみに、ブラショフにはカルフールも進出していたりする。
 再びレプブリチ通りを、今度はウィンドウショッピングをしながら歩く。携帯電話店が本当に多い。W880iを気に入っていたのだが、後継機種?のW890iの金属質感ときたら、口から鼻血が出そうなほどである。ただ、端末のみ購入で1,000LEI超では、さすがに手が出ない。ソニエリは今すぐにこの端末を日本市場に投入していただきたい。さて、それとは別に、ようやく自分が欲しいと思える物を見つけたので購入。これで自分の土産は十分である。
 高級菓子店も探しているのだが、これも見つからない。と、何となく好い雰囲気のパティセリーを見つけたので、ついふらふらと入ってしまった。シュークリームとアイスコーヒーを注文。シュークリームは、程よい甘さで実に美味。一方、アイスコーヒーは、…日本と違う、独特の味。プラハで飲んだアイスコーヒーによく似た味だ。(店の雰囲気もどことなく似ている。) 21LEI也。アイスコーヒーが15LEIもした割に不味かったのが失敗だったが、ケーキ類は美味かったし、普通のコーヒーであれば問題なさそうだ。


 パティセリーの前に、『黒の教会』と呼ばれる教会がある。攻撃に遭ったため外壁が黒く焦げてしまったのだそうな。しかし、焦げている側が影に入ってしまっていて何だかよくわからない。陽が傾き始め、眩しくなってきたので、サングラスをかける。(似合わないのは承知のうえで、一応持っているのです。)
 ブラショフの旧市街は、すっかり修復されて、観光地としての賑わいを謳歌し始めているといったところだろう。コスプレしている

おねぇさん
もいるし、英語を話す人も多く、とても賑やかで便利なところだ。ただ、シギショアラのような、他の観光地にない独自性がないような気もする。(それを担うのがブラン城なのかもしれないが。) 旧市街だけならば、半日の観光で十分という気がする。


 18:00に、先ほどのイタリアンレストランへ行き、ぺペロンチーノを注文。ところが、パスタにコシがないし、そもそもオリーブオイルの味も唐辛子の味もバジルの味もほとんどしない。素うどんを食べているようだ。これの何処が美味いというのだ? それでも、ニンニクが大量に使われていることは事実なので、疲労回復という目的だけは果たせそうだ。カプチーノをつけて15.50LEI也。


 明日は、09:04発の列車でシナイアへ向かう、約1時間の旅程である。明日こそ、ダイヤ通りに列車が動いてくれることを願う。さて、駅まで、バスで行くかタクシーで行くか… 明朝に考えよう。


Next Page

Return to Index