Sinaia

 06:30起床。朝食を摂りにレストランへ出向くと、何も用意されていない。しかし、席に座ると、パンとオムレツとコーヒーが運ばれてきた。07:40にチェックアウト。駅までの足としてバスを使うことに決めたので、

バス停
へ向かう。途中、乗るはずの4番バスに追い越された。やれやれ、これで10分待ちか…
 きっかり10分後に4番バスが来たので乗る。10分ほどで
に到着。シナイア行きのR826は09:04発車予定なので、駅で1時間待ちである。いつもながら早過ぎた到着となってしまったが、交通機関などの遅れを考えると、早めに到着しておくに越したことはない…はず。この駅は、とにかくタクシーと民宿の客引きが多く鬱陶しい。


 08:40に3番線プラットホームへ。プラットホームには、それぞれの列車ごとの編成と、どの辺りに停車するかを示す図があることに気づいた。R826の6号車はゾーンD辺りとのことなので、その辺りで待つ。風が肌寒いくらい。
 ところが、9時になっても列車が入ってこない。例によってルーマニア語のアナウンス。また遅れか? まったく、1回くらい定刻通りに走らせる根性を見せやがれ。10分ほど遅れて列車が入ってきた。と、先ほどの図と違い、たった4両編成(機関車含む;客車は6~8号車…って、どういう編成なんだ!?)ではないか。しかも、6号車は2階建てとなっていて、下の階層が一等車らしい。今回もコンパートメントではない。やはり10分遅れで発車。


 10:15に、本日の目的地であるシナイアへ到着。シナイアは、18世紀にブカレストの貴族たちの別荘地として栄えたところで、現在は季節を通してリゾートとして人気があるところらしい。高原リゾート気分を味わってみよう、というのが立案時の目論見である。リニューアルされているのか、

駅舎
もしゃれている。
 まず、駅前にはいきなり急な階段がある。街の中心部はこの階段の上らしい。荷物を持って登るのはかなりきつい。もっとも、何となくこの街は坂がきつそうな気がしていたので、宿を駅近くの"Hotel Caraiman"で取っておいた。階段を登り終えて、そのままチェックイン。時間が早すぎるので懸念していたのだが、問題なく部屋に入ることができた。ここも、昔ながらの建物を活かしたつくりになっているのだが、やはり鍵がぼろくてやや不安。シャワーカーテンもないうえに、今回はバスタブもない。これで床を濡らさずにシャワーを浴びるのは不可能だ。


 11:00に観光開始。まずは、この街の名前のもとになった

シナイア僧院
(Manastirea Sinaia)へ向かう。曲がりくねった坂道をひたすら登っていく。15分ほどで僧院に到着。19世紀に建てられた教会で、なんとなく、ロシアやウクライナにある教会に近いような気がする。(天井が丸いせいか?) 左手には、もう一つ
教会
がある。こちらはさらに古い建築らしい。
 
僧院
の裏手の道を行く。右手は渓谷になっていて、木立を吹き抜けるひんやりした風とせせらぎの音が心地好い。
道沿い
には所狭しと土産物の露店が並んでいる。どれも同じようなものばかり。果物などを売っている人もいる。


 15分ほど行くと、シナイア最大の名所であるペレシュ城(Castelulu Peles)へ出る。ルーマニアの皇帝・カロル1世が夏の離宮として建てたもので、ルーマニアで最も美しい城とされているらしい。なるほど、白壁と木造の部分が、品の好い繊細な美しさだ。周囲の山並みともよく調和している。城へ向かう道はぐるっと回り道をしているような格好で、ひたすら歩く。(


 城に辿り着いて、内部見学をするためにチケットを買う。15LEI也。ここもツアー形式で見学をするのはともかくとして、システムがひどすぎる。まず、外国人は、人ひとりがぎりぎりで出入りできるかどうかという狭い入り口の前で待たねばならない。そして、自分が説明を聞きたい言語(英語・フランス語・ドイツ語など)のガイドを適当に見つけ、その近くに陣取り、そいつが入場したら遅れないように入っていく。なお、入り口を入ったところに金属探知を含めたセキュリティチェックがある。というわけで、入り口の前は大混雑になっている。20分ほど待っても埒が明かないので、内部観光は諦めることにした。せめて、チケットにツアーの開始時間を明記するくらいのことはすべきだろう。15LEIを捨てた格好になってしまった。


 隣の

ペリショール城
を眺めつつ、ブカレストのドライバーが言っていた、ペレシュ城近くのレストランを探す。『Wooden Houseで簡単に見つかる。』といっていたが、どれもこれもWooden Houseじゃないか。結局、"Economat"というレストランに入った。House Specialitiesであるポークフィレ・パパナッシュ・水を注文、ポークフィレは、小さめの豚肉2枚を焼いてトマトベースのソースをかけまわしてあるのは好いとして、とにかく固い。顎が疲れた。これで計40LEIとは、ずいぶんと高い。しかも、100LEI札を出したら、釣りを10LEI札×4枚・5LEI札×2枚・1LEI札×10枚でよこしてきやがった。財布が厚くなって扱いづらい。
 結局、あのブカレストのドライバーが言っていたことは、地下鉄が安全ということと、ブカレストの農村博物館が好いということ以外まるで当たっていない。(もっとも、ニセ警官に遭遇していないだけだが。)


 周囲を散策しながら道を下りていくことにする。風が心地好い。昔の貴族の別荘と思しき建物がいくつもあり、確かにリゾートという雰囲気だ。それらを利用してのペンションもたくさんある。シナイアに滞在するのであれば、ホテルよりもむしろペンションに泊まったほうが面白いかもしれない。(


 道が曲がりくねっているので、自分が何処にいるのか分からなくなる。それでも、おおよその方角の見当をつけながら下りていき、30分ほどで
ホテルの裏手
に出た。公園になっていて、子どもたちが遊んでいる。ここからホテルを見ると、まるで高級ホテルのように見える。


 ホテルの前を通っている、街のメインストリートである

カロル1世通り
を散策してみる。ホテルもレストランも露店もたくさんあり、車どおりも多く、賑やかだ。ただ、何処にでもある通りという印象も否めない。車の排気ガスで、空気の爽やかさも消えている。
 両替をしようと思い、両替所に入ってみるが、1軒目はなぜか閉まっていた。そして、次に入ったトランシルヴァニア銀行で10分近く待たされた挙句、『もう5分待ってくれ。』といわれたので、すっかり頭に来てしまい、捨て台詞を怒鳴りつけて立ち去った。馬鹿にするのもいい加減にしやがれってんだ。


 どうやら、シナイアの街は、私のことが嫌いらしい。ならば、(主だった観光名所は一通り廻ってしまったこともあり)こちらも何もしないことに決め、14:30にホテルに戻った。夕食も軽いものにしよう。とにかく、早くシナイアを離れたい。長年、あちこちを旅してきたが、こんなことも滅多にない。もっとも、ここまでトラブルらしいトラブルもなかっただけに、これくらいのことが起きても不思議ではないのかもしれぬ。
 CNNを観ると(今回の旅では初めて映った)、ルフトハンザの国内線がストライキをやっているらしい。帰国便もオーストリア航空でウィーン経由だし、特に影響はないと思うが… そのまま昼寝。


 17:30になったので、夕食を確保するために外出。なんだか、今日は何を選んでも外しそうな気がするので、スーパーマーケットでパンとハムとサラミなどを調達してサンドイッチでもつくろうかとも考えた。が、それで腹を壊したら洒落にならないので、何処にでもありそうなファストフード店に入った。パスタとピザの店らしい。一人でピザを黙々と食べるのも空しいので、シナイア風パスタ(『パスタ』ではだめで、『スパゲッティ』といわないと通じない)・ミティティ・コーラを注文。期待はしていなかったのだが、トマトソースにオリーブ・ベーコンなどがからんでいて、意外に美味しい。昨日のパスタよりもずっとましだ。ミティティも脂が乗っていて美味しいし、何よりパスタの口直しになる。これで26LEIなら十分以上だ。外出のついでに、USD$30を66LEIに両替する。今回の旅行では、食費が意外に高く、当初予算を超えて両替をすることになった。(昨日のブラショフでの買い物以外にカードを使っていないということもある。)


 部屋へ戻ると、ベッドルームの照明は点かないわ、シャワーは水しか出ないわ。フロントに連絡して修理を依頼する。スタッフが流暢な英語を話してくれるので、少なくとも意思の疎通は出来る。さて、スタッフがやってきて一通り調べた後に出た結論は、…『部屋を替わってください。』であった! その発想はなかった。
 大急ぎで304号室に移動する。ツインの部屋で、広くなった。ただ、いろいろな物を出したり、また、明日必要なものを整理して置いた後なので、急ぎながら忘れ物をしないように移動せねばならない。5往復してようやく完了。こちらにはシャワーカーテンもついている。ただし、なぜかCNNが映らない。もはや理解の範疇を超えている。
 まったく、シナイアはどこまでも甘くない。リゾート気分なんかとっくに吹き飛んでしまっている。


 明日は、10:14発のR826(今日の列車と同じ。ちなみに、同じ6号車で、座席も全く同じ。)でブカレストに戻る。約2時間の、今回の旅行で最後の移動だ。今回の旅行も、はや終盤に入った。


Next Page

Return to Index