Bucharest

 07:30になんとなく起床。列車は10:14発なので、もう少しゆっくりと眠っていてもよかったのだが。朝食は、これまでで最も選択肢が豊富(といっても、ドイツなどのホテルに比べれば1/3程度)だった。ただ、オレンジジュースがないのが残念極まりない。(一日に一杯は飲まないとどうも落ち着かない。) 09:30にチェックアウト。このホテルは、スタッフも親切だし価格も安めだし、なかなかに好いホテルだった。
 駅までの道をゆるゆると下る。今日も快晴、風はひんやり。今回の旅行は天候に恵まれている。駅で、乗車予定のR826を待つ。さぁ、今日こそ定刻通りに運行されるだろうか? もはや聴き慣れたルーマニア語のアナウンスが流れる。嫌な予感がする。が、10:10にR826が入ってきた。昨日と同じ、6号車の25番席へ。と、じーさんが既に座って、鞄を開いてパンとチーズを出し、本格的な朝食の真っ最中。『通路側の席に座ってくれ。』とのこと。窓側だと陽射しがきついので、むしろ有り難い。定刻通り、10:16に発車。


 隣のじーさん、パンを食べ終えたと思ったら、今度は鞄からドライフルーツを取り出して食べ始めた。さらに、私にも勧めてくれる。干し柿のような味がした。いただき終えると、今度は右後ろの席に座っていたおばさんがウェットティッシュをくれた。皆さん親切でとても有り難い。旅行中の、言葉が通じない中での親切はとても嬉しい。だから、東京で外国人旅行者に遭ったときは出来るだけ親切にしてあげることにしている。
 このじーさん、英語もルーマニア語もだめで、ドイツ語を話すらしい。歴史的に、トランシルヴァニアにはドイツ人やハンガリー人も住んでいる。ドライフルーツの次はリキュール?を飲み始めた。鞄の中はどうなっているのやら。少し眠る。


 12:00に近くなり、急にコンクリート造りの建物が増え始めた。Gara de Nordに近づいたのだろう。そして、定刻通り12:10にGara de Nordに到着。やれば出来るではないか。じーさんに礼を申し上げて別れる。

Gara de Nord
は今日も大混雑。
 ついに、ブカレストへ戻ってきた。つまり、今回の旅も終わりに近づいたということだ。さすがにブカレストは暑く、Tシャツで十分。すぐに地下鉄に乗り、Universtatii駅へ出て、先日も泊まった"Hotel Capitol"にチェックイン。荷物を整理して、13:00に外出。


 今日は、ブカレストの旧市街エリアを散策してみる予定だが、まずは、Calea Victorieiを北上。すると、右手にあるのが旧共産党本部。(

) ここは、チャウシェスクが最後の演説を行ったところ、群集からのブーイングに戸惑い、直後にヘリコプターで脱出したところだ。当時のニュース映像を今もはっきり覚えている。 ここには、1989年の革命で亡くなった方の記念碑がある。ルーマニアの革命は、多大な犠牲のうえに成し遂げられたのだ。亡くなった方の名簿をみて、その多さに改めて驚く。黙祷。
 ここで、アジア系の男性に"Excuse me, are you Korean?"と話しかけられた。日本人と答えると、ブカレストで初めてアジア人を見たのでてっきり韓国人と思ったのだそうな。そういえば、私も今回の旅行で初めてアジア人に会った。ブカレストの見所を教えて欲しいというので、退屈という断りをつけたうえで『国民の館』を教えた。ついでに行き方も教えた。お互いの旅の無事を祈り、別れる。


 

バルチェスク通り
を南へ辿る。コンクリートの建物が並び、車の排気ガスとクラクションが凄まじい、面白みのないところだ。大学広場を過ぎたところで西に曲がる。この辺りが、ブカレストにわずかに残された旧市街だ。旧き良き時代の瀟洒な建物が意外に多く残されている。そして、これらを利用して、お洒落なカフェやファッションショップがオープンし始めている。修復されていなかったり、修復中だったりする通りや建物も多く、いまは埃っぽいが、数年後にはブカレストでも有数のお洒落スポットになるかもしれない。『国民の館』や統一大通り周辺の活気のなさが嘘のようだ。(

 "Snack Attack"というファストフード店のチェーン店でサンドイッチとオレンジジュース。8.60LEI也。


 さらに南へ歩くと、統一広場へ出た。この広場に面している、ブカレスト最大の百貨店である

Unirea
へ入ってみる。お洒落な嗜好品が溢れている。来店者数も多く、なかなかに繁盛しているようだ。一角には、携帯電話店が7つも集まっている。そんなに需要があるのか? Sony Shopもあったが、こちらには客がいなかった。ちと寂しい。
 隣には、なんとカルフールが営業中だった。こちらは日用品主体である。ここでようやく、義理ある筋向けのチョコレート類を買いととのえた。箱書きが読めない物を贈るにかぎる。


 旧市街エリアに戻り、"The Coffee Store"という洒落たカフェに入る。Crema Caffeというのを注文。出てきたのは、コーヒーアイス(アイスコーヒーではない)をグラスに詰め込んだような物だった。ところが、これが甘くてほろ苦く、冷たく、意外に美味い。これは掘り出し物だった。7.50LEI也。
 さらに散策すると、"Caru' cu bere"というレストランを見つけた。『地球の歩き方』には改装中とあったが、営業している。老舗の名店というだけあり、建物にも風格がある。これで、今日の夕食は決まった。旅の最後を飾る食事はきちんと決めたい。(ここ数年、上手くいっていないが。)


 ここまで歩くとホテルに近いので、いったんホテルに戻る。時刻は16:00, TVを点けると、北京オリンピックの開会式を中継していた。そうか、ちょうどそんな時間か。なんとなく観てしまう。日本→中華台北という入場行進はなんとも微妙ですなぁ。チャドの入場行進の際、アナウンサーが "Romania? Ha, ha, …" とやっていた。(国旗がそっくりなのである。)


 17:00に再度外出。旧市街エリアをうろついて、17:30に"Caru' cu bere"へ。席へ案内してくれるおねぇさん方が美人揃い。もっとも、給仕は別の店員がしてくれるが、こちらも折り目正しくも堅苦しくない、好い給仕だ。店内も、昔の造りを活かした改装を行ったようで、クラシックモダンという感じの好い雰囲気。期待が高まる。(


 メニューを見ると、鴨の胸肉のオーブンローストを使った"Lord's Dish"という一品を見つけた。鴨と聞いては捨ててはおけぬ。Lord's Dishに、Apple Strudel, それにWhite Breadと水を注文。さて、鴨肉のローストは、あまり味付けにこだわらず大らかに焼き上げたという感じ。鴨肉の旨みがそのまま残っていて美味しい。付け合せはザウアークラウト。ローストの口直しになるが、ちょっと量が多すぎる。欲を言えば、オレンジをもう少し多くつけてほしかったが、十分に満足。Apple Strudelは、あつあつのアップルパイという感じ。バニラアイスクリームもついていて、こちらも満足。これで48LEIなら大満足だ。1879年創業というが、共産主義時代も生き延びた老舗に敬意を表する。今回の旅行では、締めの食事が上手く決まった。
 名残は尽きないが、ホテルへ戻ることにする。ホテルの近くに、不思議な商店がある。何処にでもある店なのだが、ひっきりなしに客が来ては何かを買っていくのだ。私も、そこで水を調達した。何かの縁起かつぎになればよいが。
 部屋へ戻り、CNNを観ながら荷物の整理。ロシア軍が南オセチアに侵攻したらしい。まったく…


 これで、今回の旅行における観光は終了。明日は、08:35ブカレスト発のOS7012から、ウィーンを経由して東京へ戻る帰国の途である。正直に言って、まだまだ旅を続けたい。Gara de Nordから、ヨーロッパの何処へでも行ける。しかし、今は帰国の途につくことにする。起床は05:00, 06:00に迎えのドライバーが来る予定だ。


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