Qingzang Railway / 青蔵鉄路

 朝、目が覚めると既に頭が痛い。早くも高山病に罹ったようだ。食欲も、車窓の風景を観る気力も全くわかない。車掌から、酸素吸入用のチューブをもらい(1つ多くもらったので土産にする)、枕元にある酸素供給孔から鼻腔に突っ込むと、徐々に頭が楽になってくる。しかし、外すと頭痛が戻ってくるので、外すに外せない。高山病を克服するにはとにかく順応するしかない、と分かってはいるのだが… それでも外を見てみると、地の果てのような草原が広がっている。近くの山は草木も生えておらず土の色だし、遠くには雪山も見える。こんなところでよく人が暮らしているものだ。すごい景色ではある。(



 酸素を供給されながらひたすら眠ってしまう。これでは

標高5,000mの景色
も何もあったものではない。苦しい。昼食を摂る気力も出ず、ひたすら眠る。こんなことになるとは、旅行前の予測をはるかに超えたきつさだ。昨日はハイテンションだった欧米人の乗客も、今日はぐったりとしている。
 トイレに行ってみると、窓が開いていた! せっかく与圧機能を持つ車輌もこれでは全く意味を成さない。青蔵鉄道では高山病の心配はない、なんて嘘っぱちだった。


 ナクチュ(那曲)駅に到着したところで目が覚めるが、頭痛は治まらない。ちなみに、標高は約4,500mである。出発前は、この駅に降りてみたい、などと考えていたのだが、とても実行できる状態ではない。(


 それでも、あと数時間でラサ駅に到着するので着替えたのだが、それだけのことで吐いてしまった。万一を予想して手元にビニール袋を置いておいて本当に好かった。水を飲むといい、とも聞いていたのでお茶を飲むが、それもすぐに吐いてしまった。これからどうなるのだろうか… 
ダムシュン(当雄)駅
で少々停車。


 18:30に、ようやくラサ駅に到着。(

) ラサ駅は広い、と聞いていたが、むしろ高いという印象だ。なぜこんなに天井を高く造っているのだろうか? 乗客もぐったりしながら歩き出しているが、中には吐いてしまう人もいたりする。
 到着側の駅構内は意外に狭く、待合室などもなく、すぐに外へ出されてしまう。出迎えのガイドさんがいるはずなのだが見当たらない。構内の係員に訊いてみると、出迎えの人たちは、
駅舎
はおろか駐車場にも入れず、外の道路のところで待つしかないらしい。巨大な構造物を造っても客が入れないようにする、というのが理解できない。とにかく、名前を出してくれていたガイドの張さんと合流。マフラーのような白い布を首にかけてくれた。チベットの祝福のしるしなのだそうな。車まで荷物を引いていくのも一苦労である。


 約40分ほどで、ラサでの宿である西蔵賓館へ。一応、ラサで最高級のホテルであるが、フロントのスタッフの態度は好くない。さて、車内で高山病対策の点滴について教えてもらったので、部屋に入ってすぐに手配をお願いする。
 20分ほどで医者と看護婦(なぜか子供も)がやってきて、血圧などを測った後に点滴をしてくれた。一人当たり1,800元(日本円での支払いも可能だが、現金払いのみ)と安くはないが、健康には換えられない。なお、海外旅行傷害保険で戻る、とのことである。壁にかかっている装飾や照明スタンドを上手く使って点滴スタンドにしてしまった。手馴れているなぁ。


 約1時間ほどの点滴を終えると、頭痛も消え、劇的に改善した! こんなに効くものだろうか? 今日は何も食べていないので、外に出て、ホテル向かいの果物屋で西瓜・バナナ・葡萄などを買い、140元を支払った。どれも、とても甘くて美味しいが、特に西瓜が美味しい。ホテルの売店では1.5Lの水を10元で購入。売り子のおばちゃんがにこやかでほっとする。


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