世界には『聖地』といわれる場所がたくさんある。これまでに訪れた、ラサ、セルギエフポサド、ムツヘタやエチミアジンなども『聖地』であろう。数ある『聖地』の中であえて1つを選ぶとした場合、ユダヤ・キリスト・イスラームの3つの宗教の聖地であるエルサレムが有力候補の1つであることは間違いなかろう。何年も前から訪れてみたかったこの街を今年の旅行先とした理由は、中東各国の民主化運動により情勢がさらに流動的となり来年の状況が読めないこと(イエメンに加えてシリアも当面訪問不可になってしまった)が大きい。さらに、恵比寿のイスラエル料理店『タイーム』で親切にしていただいたことで決心した。旅のきっかけなんてそんなものだ。
手配は、『タイーム』で紹介していただいたテマサトラベルさんに依頼した。希望通りのプランで、当初想定予算よりも安く組んでくれたのが有り難い。エルサレムを中心に、ガリラヤ湖とテルアビブに立ち寄るプランとした。一方、あえて死海は外し、あくまで『聖地巡り』に特化するプランである。(イスラエル南部にも聖書ゆかりの旧跡はいくつもありますが。) 今回の旅は、とにかく『暑い』ということがわかっているだけに防寒の心配がないため、かえって旅支度が楽だった。出入国の審査の厳しさに定評があるだけに、とにかく手荷物を少なくすることが無用のトラブルを避けるコツであろう。
ガイドブックも、『地球の歩き方』の他に、Kindle版のLonely Planetを購入。iPhoneやPCに入れておけるので手荷物を少なくできる。月並みな感想だが、便利な世の中になったものだ。
ところで、旅程を確定した後に、ちょうどこの時期がイスラーム教のラマダーン(断食月)に当たることに気付いた。非ムスリムではあるが、エルサレムのムスリム地区などでは飲食を遠慮したほうがよいのだろうか?
09:25発のKE706でまずはソウル・インチョンへ。テルアビブ行きKE957にも成田でチェックインできたが、満席で窓側の席しか取れないというのがつらい。
約2時間足らずで、定刻よりも20分ほど早く11:35にインチョン空港に到着。降機ゲートのすぐ近くにTransfer Counterがあり、そこで手荷物検査を受ければすぐに出発ゲートに行けてしまった。この間わずか10分、ハブ空港の名に相応しい便利さだ。設備も清潔で分かりやすく、これまでに訪れた空港の中でもトップクラスだろう。昼食にはフードコートで全州伝統ビビンパ(8,000ウォン(約550円))、とりたてて特徴のない普通の味。NAVER SQUAREという無料のネットカフェがあったが、自分のPCではネット接続できなかった。4階には無料のシャワールームまである。復路で行ってみようかな。旅の高揚感を味わいながら14:40の搭乗開始を待つのみ。
だめもとで4階のTransfer Counterに出向き、通路側の座席への変更を申し出たところ、あっさりとOKされた。これは嬉しい。しかし、成田で満席といわれたのは何だったのだ?
14:40に搭乗開始。若い韓国人女性がたくさん乗ってくる。イスラエルを訪れる韓国人は多いのだろうか? 15:30に離陸、約12時間の長旅が始まる。あとは、iPodを聴きながらガイドブックを読んだり眠ったりする、いつもの時間つぶしである。特筆すべきは機内食の美味しさ、これまででもトップクラスといってよかろう。ビビンパがメニューにあるというのも斬新過ぎる。タコでなければ食べてみたかった。しかし、イスラエル行きのフライトで機内食にタコを出すというのもどうなんだろう… 周囲は高校生くらいの韓国人の女の子のグループ。観光なのか、それとも学校や団体の行事なのか? 隣の女の子がえびせんを分けてくれた。どうみても『かっぱえびせん』なのだが… 英語がダメなようで、話すことが出来なかったのが残念だった。
地図を見るとカスピ海上空を進むらしい。昨年の旅を思い出す。一方、シリアの上空は避けたルートになっているようだ。
定刻より約40分早い20:20(時計が6時間戻る)にテルアビブ・ペングリオン空港に到着。初めて訪れる国の空港を歩くときの高揚感と緊張感がたまらなく好きだ。空港の印象がその国の第一印象(しかもだいたい合っていることが多い)となるのだが、清潔で機能的な空港で好印象。ここは『先進国』だ。そして、
ロビーで私の名前を出してくれていた担当者と合流し、タクシー乗り場へ。もっとも、タクシードライバーに私を引き渡したところでこの人の仕事は終わりらしく、何処かに行ってしまった。21:10に空港を後にする。
高速道路の造作といい、周囲の夜景といい、印象がアメリカそっくりなことに驚く。看板に書かれているのがヘブライ語とアラビア語でなければ、アメリカといわれても何の疑いも抱かないだろう。道路の舗装も素晴らしい。ただ、検問所の兵士が持つ銃の大きさがこの国の『本気』を示しているように思った。
約40分で、エルサレムの宿である"Grand Court Hotel"に到着。チェックインもスムーズに進み、22:00に部屋に入ることが出来た。ツインで広さも十分、電源も取れるし、バスタブもあるし、文句はない。ただ、wi-fiの接続が上手くいかない。シャワーを浴びて眠る。