子どもの頃からソヴィエト連邦に関心があり、いずれ訪れてみたいと思っていた。しかし、社会人になる前にソヴィエト連邦は解体されてしまい、その夢は、構成していた15の共和国全てを訪れることに変わった。これまでに、ロシア・リトアニア・ラトヴィア・エストニア・ウクライナ・アゼルバイジャン・グルジア・アルメニアの8ヶ国を訪れたが、残る7ヶ国については、ウズベキスタンを除けば観光地としての魅力は劣ることも否定できず、訪れることに躊躇していた。
しかし、今年のウクライナ情勢の変化がきっかけとなった。まさか、過去に訪れたクリミアに対してロシアが実効支配を試みようとは予想だにしていなかった。この地域にはまだ紛争の火種が残っており、何かのきっかけで火が付くとも限らない…ということに思い至り、今年はベラルーシ(ミンスク)とモルドヴァ(キシナウ)を訪れることにした。
例年通り、ユーラスツアーズさんに手配をお願いしようと思っていたのだが、お見積りをいただいたところ、予算を大幅に超えていた。インターネット、特にスマートフォンを活用した旅行関連サービスが次々に出ていることもあり、今回は、全ての手配を、自身で、ネットにより行ってみることにした。航空券は航空会社のサイトから直に購入してeチケットを入手し、ホテルはbooking.comで予約を取っていく。当然、全て自分で手続きし、間違いなども全て自分に降りかかるのであるから、慎重に進めていかねばならぬ。
ミンスク行きのフライトチケットを購入するために、ベラヴィア航空のサイトでクレジットカード決済を試みたところ、なぜか拒否される。どうやらクレジットカード会社側のセキュリティに引っかかっているらしい。困っていると、クレジットカード会社から照会の電話があったので、一時的にセキュリティを緩めてもらい、無事に決済完了。出発前に改めて電話し、旅行期間と滞在国を伝えて、セキュリティ設定を変更してもらった。
ベラルーシはビザが必要なので、ビザ申請のみ改めてユーラスツアーズさんにお願いすると、モスクワ経由のトランジットにおいてロシアのトランジットビザが必要となる可能性があるとのことで、併せてそちらの手配もお願いした。結果、ロシアのビザは問題なく取得できたが、ベラルーシのほうは申請を却下されてしまった。なんでも、インターネットの代理店予約では、宿泊証明とは認めてもらえないらしい。というわけで、ミンスクのホテルのみ、ユーラスツアーズさん経由で改めて予約し、ビザの再申請を行ったところ、何とかビザをもらうことが出来た。
ミンスクは、空港と街との公共交通のアクセスが非常に悪いので、123belarusで空港-ホテル間の往復トランスファーを計EUR60で手配しておいた。空港の到着ロビーで名前を出して待っていてくれるそうな。
さらに、モルドヴァでは、個人では行き難い見どころがあるので、個人ガイドを紹介してくれるviatorでそれぞれガイドさんとメール連絡を取り、予約を行った。
そして、全ての旅程の管理をTripITで行うことにし、全てのフライト予約やホテル予約等に関する詳細情報を登録しておく。PRO契約を行うと、フライトの変更などのアラートも行ってくれるという。
ここまでネットを活用した旅となると、旅の途中においてもアクセスする必要性が増してくる。ホテルのwi-fiも過度に当てにするのは危険(過去、実はロビーでしか使えないとか、電波が弱いとか、いろいろな目に遭った)だし、海外でのパケット定額サービスも高額だったり対象外の国だったりするので、エクスコムグローバルでwi-fiルータをレンタルすることにした。ベラルーシもモルドヴァも対象国に入っているが、現地の電波状況等によりアクセスを保証できないとのこと。まぁ、首都の中心部にいることだし、何とかなるだろう。
さて、今回の旅では、最初にロンドンに住む友人を訪れることにした。7/26(Sat)12:00発のSU263便でロンドンに向かう。ロンドン滞在中の日記はここには掲載せず、ロンドンを発ってミンスクへ向かうところから始める。なお、案内していただいた地域は、2000年のNY滞在時に住んでいたMamaroneckを思い出すような、とても暮らしやすそうなところだった。また、『イギリスの料理は美味しくない』という先入観を見事に打ち砕くような、美味しい食事に逢うことも出来た。
12:00にガトウィック空港に到着。easyJetなどで南欧などに向かう人々で混雑している中、ミンスク行きB2 852便(と、隣のキエフ行きフライト)へチェックインする人の少なさが侘しさを誘う。友人と別れ、手荷物検査カウンターへ。ここからは、例年通りの一人旅であり、気持ちを再び引き締める。
出国ゲート側へ出るといきなり免税店街。エレヴァンの空港もこんな造りだったっけ。出発ゲート案内を見ると、朝のフライトがまだ出発していなかったり、そろそろ出発するはずのフライトのゲート案内が後刻になっていたりしている。ミンスク行きも、出発が14:05予定なのに、ゲート案内は13:20予定となっている。悪い予感がする。
免税店街を抜けると広間のようになっていて、そこには出発を待つ人々が溢れていた。椅子に座り切れず、床に座る人もたくさん。アナウンスを聞くと、どうやら午前中の悪天候で着陸に影響が出て、出発にも影響しているらしい。easyJetなどが特に影響を受けている。バーやカフェ、マクドナルドも満員である。とりあえず待つしかないので、水1Lとオレンジジュースを買い、ネット接続しながら待つのみ。
13:20になり、表示が"Please Wait"に変わった。状況が後退しているような気がして少々焦りを覚える。ようやく、13:35に、34ゲートとの表示が出た。ゲートの方向に歩き出すと、途端に人が少なくなった。30番台のゲートは離れたところにあるのか、5分ほども歩いてようやく到着。ここにもそれなりに商店があるのに、客がほとんどいないので侘しい光景ではある。まぁ、これで一安心か、と思ったのだが…
搭乗案内予定時刻の13:40になっても、何の案内もなく、時間だけが過ぎていく。係員は通話機で連絡を取り合うのみで、空港の係官と怒鳴り合いまでしている。再び焦りを覚え始める。結局、14:37に搭乗案内が始まった。乗り込んでみると、席の掃除が全くされておらず、CAさんに掃除をお願いする。ちなみに、TripItは特にアラートなど出してくれなかった。
定刻から1時間遅れの15:10にようやく離陸。さらばロンドン、また来る日まで。機内アナウンスによれば、午前中の悪天候による混乱に加え、預け荷物の荷捌きや清掃などの空港の対応のせいなのだそうな。到着も1時間遅れの20:05(時計が2時間進む)予定とのこと。ようやく機内食が出た。段ボールみたいな味わいのチキンとライス、キュウリである。嗚呼、まだこのレベルのフライトがあったか。少し嬉しくなる。残念ながら、マイレージプログラム制度はないようだ。ぜひ加入したかったのだが。
機内には子どもがたくさんいて、遊んだり泣いたり大混乱。眠れたものではない。愛想のつもりで笑いかけたら気に入られたのか、男の子2人にずっとじゃれつかれた。少々疲れたが、これで彼らが少しでもアジア人を好きになってくれればいいのだが。
アナウンスの通り、定刻より1時間遅れの20:05にミンスク国際空港に到着。まだ陽が高くて一安心。暗くなる前にホテルに到着できるかもしれない。機体はブリッジに着かず、タラップからバスに乗る方式。これはバクーの空港以来だ。すぐに空港ビルの入り口に着き、そこからすぐにイミグレーション。パスポートと、機内で書いた出入国カードを渡すと、特に質問もなく入国。左手のバゲージクレームに行く。テーブルが2つしかない。広告はカジノばかり。この国の観光事情が少しだけ把握できる。5分ほどでテーブルが動き始め、幸運にもすぐに預け荷物が出てきた。やっと物事が順調に戻り始めた。
到着ロビーに出ると、手配通りドライバーが私の名前を出してくれていた。車に案内してもらい、20:40に街へ向けて走り出す。平坦な土地、広くてまっすぐな道路、キリル文字の看板、白樺の林、オブジェのようなバス停留所と地下の横断歩道への入り口、そしてビル。懐かしさすら覚える、ロシアの風景だ。途中、小高い丘の上にある何かの記念碑を通り過ぎた。まぁ、おおよその想像はつくが。街に入ると、とにかく大きなビルが延々と続く。この、社会主義の街並みを観に来たのだ。期待を裏切られることはなさそうだ。
21:10に『ホテル・ユビレイニー』に到着。明後日の空港行きのピックアップを04:45にお願いし、往復の運賃として決められていたEUR60を支払い、ホテルのロビーへ。嗚呼、もう、この内装がまったくたまらない。チェックインは問題なく出来たが、両替のカウンターが既に閉まっていたので、今日は諦める。10階の1019号室にチェックイン。