Prologue

 『インド』は、旅好きにとっては意識せざるを得ない国の一つである。多くの旅好きがインドを訪れ、沈没するほどにハマったり人生観が変わるような経験を得る人たちもいる一方で、その独特の国柄などが合わずに酷い経験となってしまった人たちもいる。私も、旅好きの端くれとして、インドはずっと意識している一方で躊躇もしていた。
 ただ、2015年に入ってから、何となくインド行きの意識が強くなった、もしかすると、これが『呼ばれている』という感覚なのかなぁ…と思いつつ調べてみると、インドも地域によっていろいろな顔があることが分かってきた。特に、南インドは、北インドに比べて人柄も大人しめで、リゾートのような見どころもいくつかあるというので、今回はインド入門編として南インドに行くことに決めた。もっとも、南インド旅行のベストシーズンは10月から3月で、8月は雨期の終わりに当たる。天候にはあまり期待しないほうが好かろう。
 最初は、昨年と同様にネットで予約を組み立てていこうと考えていたのだが、調べていくうちに、一人旅用のパッケージを使ったほうが安くて手っ取り早いということで、何度かお世話になっているファイブスタークラブさんにぴったりのプランがあったので、それを利用することにした。例年に比べてあまり自由度はないが、もともと一つの街で長く過ごすという計画ではなかったので特に問題なし。半日ながらデリーでの自由行動、アラップーザでのホームステイやコヴァラム・ビーチなど南インドのリゾートも組み込まれている。ビザも無事に発給され、出発までの準備は特に問題なし。


 8/1(Sat)1135発のエア・インディアAI307でデリーに向かう。このフライトへのチェックインがなかなか進まず約1時間近くもかかってしまったせいで、成田空港内の店やDuty Freeを歩く時間がほとんどなくなってしまった。何かを買う、というわけでもないのだが、旅の始まりを実感できる時間として楽しみにしているだけに少々残念。機材はB787で広さも悪くないし、充電用のUSBポートもあるし、座席のポケットの配置もよい。事前の依頼通り通路側で、しかも3列配置の中央には誰も来なかったので、余裕を持って過ごすことが出来た。機内食にはやはりカレーが出る。しかもけっこう辛い。
 約8時間のフライトを経て、16:15(時計が3時間30分戻る)にデリー・インディラガンジー空港に到着。初めて訪れる国の初めての空港にはいつも独特の緊張感を覚えるものだし、ましてやここはインドなので、緊張感も大きい。しかし、空港は拍子抜けするほどに普通。10分ほどでイミグレーションに到着。手の形をしたモニュメントには何の意味があるのだろうか? 機内で事前に配られた入国カードとパスポートを渡すだけで、特に問題なく入国。イミグレーションの先に免税品店があるのには驚いた。まぁ、確かに帰国した時のお土産をそろえるには便利かもしれないが…
 バゲージ・クレームに両替カウンターがあったので、とりあえずUSD50を2,940インド・ルピー(以下INR)に替えておく。レートは市中よりも悪いだろうけど、現地通貨が全くないというのも心細い。さて、預け荷物が出てくるレールの表示がない。同じフライトで到着したらしい日本人の女性にも訊かれたが、分からないので何となく人だかりのするほうに行ってみたところ、そこが当たりだった。この方は、ヨガの聖地として知られるリシケーシという街に行き、6ヶ月ほども滞在したいと考えているのだそうな。インドを旅するには、それなりの強い思いが必要なのかもしれない。
 10分ほども待ってようやく預け荷物が出てきた。税関申告書も記入しておいたのだが、Green Lineには係官すらもいない。


 さて、いよいよ到着ロビーである。私の名前を出してくれていたガイドさんと合流。さて、いろいろと悪名高い噂を聞いていたのだが、それほどカオスというわけでもないな、というのが第一印象。少なくとも、1998年のシェレメチェヴォの到着ロビーよりはよほどましだ。もっとも、油断させておいて…かもしれない。緊張感は必要だ。それにしても蒸し暑い。東京にいるような感覚を覚える。
 ホテルまでの車に乗ると、ガイドさんから明日のツアーの売り込みを受けた。デリーの見どころ5ヶ所を廻るツアーで『通常90ドルのところ、君だけには特別に20ドルディスカウントで70ドル。ランチでタンドリーチキンを食べるなら、8ドル追加で食べられる。』だそうな。デリーはいろいろ面倒そうなのでちょっと心が動いたが、半日で5ヶ所も廻るのも忙しない気もしたし、一人で動くことも大事と思い直し、断った。
 15分ほどで今日の宿りである"Red Fox Aerocity"に到着。空港のすぐ近くで、開発途中のニュータウンの中、といった雰囲気。チェックインを終え、明日の1800のフライト登場のために、ガイドさんと明日の1600にこのホテルのロビーで待ち合わせることとし別れた。
 さて、特に空腹でもないのだが、飲料水は欲しい。というわけで、ホテルから最寄りのメトロ駅まで歩いてみるが、ホテルの周囲にも駅にも一軒も店がない。諦めてホテルに戻り、フロントにどこで水を買えるか訊いてみると、フィットネスクラブに備え付けの200ml入りペットボトルを2本くれた。今夜はこれでいいや。今夜はゆっくり横になることにしよう。


 明日は、デリーの市中を少しだけ観光し、1800のフライトでコーチに向かう。とにかく、体調と、デリーでのトラブルに気を付けなければならない。


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