Prologue / Taormina

 初の海外一人旅は1998年のロシア旅行なので、今年はちょうど20年目の節目の年に当たる。それを記念してまたモスクワやその周辺、あるいは旧ソヴィエト諸国に行こうかと思ったが、年齢のせいなのか、どうも面倒に思えてしまった。またも地中海の島などで暖かい陽光や風の中で海を眺めて癒されたい、という気持ちが強くなったので、憧れだったシチリア島とマルタに行くことにした。手配を自分で組むことも考えたのだが、ハイシーズンでもともと高いこともあり、何度も使っているファイブスタークラブに、シチリア島のリゾートであるタオルミーナとマルタを組み合わせた適当なツアーがあったのでそれを使うことにした。タオルミーナ滞在中は、日帰りでシラクーサを訪れることとした。


 8/4(土)22:00発のエミレーツ航空EK319で出発。18:30頃に成田空港に到着すると既にチェックインが始まっており、まだ客も少ないのでスムーズにチェックインできた。第2ターミナルにはあまり縁がなく、店舗の構成などもよくわからない。夕食の時分なのでレストランは混雑している。外れにあるカフェで夕食代わりにホットサンドを食べた。搭乗ゲートは増設されたものなのかえらく遠く、何となく薄暗い通路を歩いていく。途中、ぽつんと営業している店舗が深夜のサービスエリアのような寂寥感を醸し出していてよい。搭乗ゲートの周囲にはたくさんの人がいる。
 21:15に搭乗開始。さすがエミレーツというべきか、それともA380という巨大な機材のおかげか、エコノミーといえど席は広めで、足元にも余裕がある。しかも隣は空席というのも幸運だった。22:00に離陸。2時間後に機内食が出たが、これはまぁ普通。あとは寝るだけだ。朝食で起こされた以外、約10時間の飛行時間のうち実に7時間以上を寝ていた。


 8/5(日)の03:00(時計が5時間戻る)にドバイ国際空港のターミナル3に到着。初のアラビア半島だが、今回は入国しないのが残念ではある。(もっとも、パスポートにイスラエルのスタンプがあるので入国できないだろうけど) 10分ほどで機外に出て、そのまま正面で手荷物検査を受け、Connectionsの方向指示にしたがって歩く。すれ違う男女の服装が、ここはイスラーム文化圏であることを印象付ける。ドバイからカターニアまでのフライトはFlydubaiというLCCのフライトを使うので、ターミナル2へ移動しなければならない。ターミナル間移動バス乗り場へ行き、バス待ち。03:25にバスがやって来たので乗る。空港の外周を運ばれていく。かなり離れたターミナルのようで、昔のシェレメチェヴォ空港でのターミナル2からターミナル1への移動を思い出す。空港の外には高速道路が走っていて、自動車ディーラーなどが看板を出しており、そのアラビア語表記にそそられる。来年にはイスラエルのスタンプが捺されたパスポートを切り替えられるので、イスラーム諸国を再び旅行先とすることができる。
 03:45にターミナル2に到着した。ここでもう一度手荷物検査を受ければDuty Freeゾーンだ。LCCターミナルなので何もないのでは、と思っていたが、ショップもカフェもそれなりにあり、雰囲気も明るく、フリーwi-fiも使える。こんな時間でもけっこうな混雑だ。カターニア行きEK2435のゲートがF2であること、定刻通り08:10の出発予定であることを確かめた。つまり、ここで約4時間の待ち合わせである。まぁ、遅刻寸前で焦るよりははるかにましだ。このターミナルからは、クウェートなどの中東諸国へのフライトを中心に、バクーやビシュケク、果てはジェッダ、カーブル、アルビルへのフライトがあったりする。アラビア語の看板を出すマクドナルドやKFCにはちと興味があるが、空腹ではないのでパス。カフェでアメリカンコーヒーをDHS20で買い、ここまでの日記をつけておく。04:30頃にアザーンが流れた。これもよい。


 07:15に、ようやく搭乗するEK2435の搭乗案内が始まった。バスに乗って機材まで運ばれるが、バスの中で10分ほども待たされ、08:00にようやく搭乗。よくある中型機の機材だ。搭乗率は50%くらいだろうか、またも隣の座席が空いている。08:25に離陸。ここから約6時間のフライトなのだが、時差を考慮するとあまり眠るべきではない…といいつつも、眠いものは眠い。
 FlydubaiはLCCなので、機内食も飲み物も有料で提供している。エミレーツ航空でチケットを買った人にだけ、野菜中心の軽食が出た。11:50(時計が2時間戻る)にカターニア空港に到着。入国審査もスムーズだったが、なかなか機内預けの手荷物が出てこない。ここで30分以上も待たされた。ようやく手荷物を受け取り、出口のところで待っていてくれていたドライバーさんと合流。空港の外に出ると少し蒸し暑い。12:50に空港を後にした。そういえば、イタリア入国は25年ぶり二度目だ。


 すぐに高速道路に乗り、ひたすらに進んでいく。なんとなくだが、路面などが古ぼけているような気がした。少し雲が多いようで、車窓の陽射しもきついというほどではない。約40分ほどでタオルミーナ最寄りの出口から一般道に。ここからは九十九折りの急な登りの道を行く。これは歩いて登るのは無理だ… 街のタクシー乗り場で車を降り、ここから少し歩いて、タオルミーナの宿である "Hotel Isabella" にようやくチェックイン。24時間以上を要する往路だった。
 荷物を置いて観光を開始。といっても、今日はこの街の土地勘を掴むことが主な目的である。タオルミーナはシチリア有数のリゾート地で、ホテルが面しているコルソ・ウンベルト一世通りがメインストリートで、歩行者天国となっている。通りの両側には、レストラン・カフェ・バー・高級ファッション店・土産物店などが並んでいる。行き交う人々もみな笑顔。サントリーニ島のイアの街にも似ている。まずは通りの一方の端であるメッシーナ門へ。メッシーナの街へ続く道に面しているということだろう。この門の外側は狭い道を車やバスが行き交っている。この近くに、"Pizza Mania" というピザ屋があったので、遅い昼食としてトマトソースベースのピザを一切れ注文した。一切れといっても日本のそれの3倍以上はあろうかというもので、これがEUR1.5というのだから驚きではある。しかも予想以上に美味しい。
 まずは明後日の移動のために必要なバスターミナルを探す。ちょっと迷ったが無事に見つけ、バスの時刻表を確かめた。メッシーナ門からウンベルト一世通りに戻る。曇り空で陽射しこそないが暑く、冷たいものが食べたくなってくる。タオルミーナでは、グラニータという氷菓子が名物と聞いていたので、グラニータが評判という "BAM BAR" へ。なるほど満席で、少々待たされた後に、

レモンのグラニータ
を注文した。きめの細かいかき氷のようなもので、レモンの酸味がほどよく、実に美味しい。EUR3.5を支払った。これは何度か食べたい。
 ウンベルト一世通りを歩いていくと、4月9日広場へ出た。ここからははるかに地中海を見渡せる。タオルミーナの街は山の中腹にあるのか、海岸までは急峻な崖となっている。海辺は青く透き通っている。滞在中に一度は海辺に行ってみよう。時計塔の下をくぐり、さらに通りを行くと、ドゥオモ広場に出た。噴水がモニュメントとなっているらしい。広場には教会が面していて、中に入ることもできる。日陰で座って休むためにも好都合ではある。
 さらに通りを進むとカターニア門に出る。カターニアへ続く道に面しているということだろう。ここまでがメインストリートということになる。さほど広い街ではなく、わかりやすい。ここからは通りをぶらぶらと戻ることにした。店を眺めつつ歩くのもよいし、4月9日広場から海を眺めつつ風に吹かれるのもよいし、ベンチでぼーっと休むのもよい。メッシーナ門近くの "GERATOMANIA" でレモンと桃のジェラートを食べた。ジェラートといっても、これもさらっとした味わいだ。美味しい。(


 19時近くになったので、まだ明るいが夕食を摂ることにした。カターニア門近くの "Trattoria Tiramisu" という店のメニューを眺めていると、開店直後ではあるが一人でもかまわないということなので、ここに決めた。この店は海産物が評判らしいので、Linguine ai Frutti di Mare という

シーフードのリングイーネ
を注文。これに、店名となっているので恐らく自慢なのではというティラミスと炭酸水を注文した。リングイーネにはアサリ、イカ、エビなどのシーフードとその旨みを閉じ込めたようなソースがかけられていてとても美味しい。量が多いかと思ったが何とか食べ切ることができた。
ティラミス
もさほど甘くなく、見かけほどには多くなく、こちらも食べ切ることができた。EUR28と決して安くはないが、それだけの価値のある食事だった。
 陽もだいぶ傾いてきたが、人通りはますます多くなっている。恐らく夜も賑やかな街なのだろうが、19:45にはホテルに戻った。
 明日もこの街をぶらぶらするだけである。

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