Prologue

 一昨年頃から、自身の「老い」を実感せざるを得ないことが増えてきた。旅による心身への負担も無視できなくなりつつある。若い頃から考えてきた「年を取ったら旅のし易いところへ」に移行する頃合いかもしれない。もう一つ、世界各地の紛争やノートルダム寺院の火災のような事件により、いつでも見られると思っていたものが突然に見られなくなるかもしれない、ということに気づかされた。これらを勘案して、今年の旅は最も観たいものの一つであるアルハンブラ宮殿に行くことにした。併せて、トレドとセビリアを訪れることにした。


 11:05発のイベリア航空IB6800便でマドリードへ。出発3時間前に空港に着いたのにチェックインに30分かかる。空港到着は最低でも出発3時間前にすべき、という時代なのだろう。10:25に搭乗開始。前の座席のおっさんが大きな荷物をいくつも頭上棚に入れてしまっていたので、通路を挟んだ反対側の頭上棚に入れる。これも迷惑なことだ。最近は機内の座席に着くとすぐに眠くなり、離陸に気づかないことも多い。今日もすぐに寝入ってしまったが、1時間経ってもまだ離陸していない。何だかなぁ…
 1時間遅れでようやく離陸。これから13時間を機内で過ごすことになる。ただでさえつらいのに、イベリア航空の座席はやや狭いうえに、とにかく空調が寒すぎる。温度を上げてくれるよう頼んだのがあまり改善されず、薄いブランケットを体に巻き付けるしかなかった。機内食は可もなく不可もなし、量は少なめか。5時間ほどは寝られたような気がする。


 17:55(時計が7時間戻る)にマドリード・バラハス空港に到着。周囲の大地が白い。空港は広いがあまり旅客はおらず、入国審査でもバゲージクレームでも待たされることなくスムーズに通過できた。プエルタ・デル・アトーチャ駅までのバスがちょうどいたのでEUR5を支払って乗り、18:40に空港を後にした。19:15にプエルタ・デル・アトーチャ駅に到着。この駅の真正面にある "Hotel Mediodia" が今夜の宿である。チェックインも問題なし、532号室は合理性の塊のような一人部屋だ。
 19:45に宿を出る。まだ陽が高く、暑い。掲示板は37℃を示している。今回の旅程ではマドリードをほぼ素通りするようなプランになっている。このわずかな時間を利用して何処かを見ることも考えたが、やはり長時間のフライトで疲れを感じたので諦めて、駅に行き明日と明後日の列車のプラットフォームの位置関係を把握する。駅を後にして再び周囲を歩く。SIMカードのイラストを掲げる店があったのでデータSIMを売っているか訊ねると、Orange Telecomの3GBプランのSIMをEUR10で売っているというのでそれを買った。これで旅程中のネットアクセスは問題なかろう。
 この近くにある

"Museo del Jamon"
(生ハム博物館)という店へ行った。店名の通り生ハムが名物の店で、バーやレストランも併設している。ここで、軽い夕食としてイベリコ豚生ハムのサンドイッチと水をEUR5.1で買った。生ハムが実に美味しい。この選択は大当たりだった。ついでに水1.5リットルをEUR1で買い、21:00にホテルに戻った。


 明日は、プエルタ・デル・アトーチャ駅09:20発の列車でトレドへ行く。大学の卒業旅行以来、トレドに行くのは26年ぶりだ。


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