夏の旅に出られるかどうかは、健康・予算・時間・安全など、いくつかの条件が達成されるかどうかにかかっている。今年も、幸運にもこれらの条件が達成されそうなので、旅に出ることにした。行き先は、これまで訪れたことのない候補先の中から、イスタンブールを選んだ。まずはイスタンブールで4日間(5泊)を過ごすことにして、その後、エーゲ海沿岸の都市イズミルに移動して3泊し、その近くにあるエフェソス遺跡を訪れることにした。昨年の反省から、あまりあちこちを移動しないようなプランとした。ターキッシュエアラインズの航空券を買い、booking.com でホテルを予約する。円安がきつい… さらに、トプカプ宮殿やエフェソス遺跡のような観光ポイントへの入場料がとても高い! 外国人に対しては数倍の値段をつけているようだ。これぞインバウンド政策であろう。
トルコ旅行に関するサイトを見ながら毎日のプランを練り、iCloudのメモに記録して、観光ポイントをGoogleマップに登録していく。こうすれば、旅行中もiPhoneやiPadで参照できる。昨年の失敗に懲りたので、徒歩の行程ではできるだけ坂道を降りるように組んだ。ただ、とにかく観光ポイントや料理などに関する情報が溢れかえっていて、いくら調べてもキリがないので、ある程度まとめてあとは当日の気分に任せることにしよう。もうそんなに歩き回ることも食べることもできないし。荷造りを進めてみると、バックパックでは入り切らないように思えたので、5年ぶりにスーツケースを使うことにした。これなら余裕もあるので、お土産を買ったとしても十分に収まるだろう。出発日が近づくにつれて、初めての国を訪れるとき特有の、興奮と少しの不安・焦燥感がない混ぜになったような独特の感覚が強まっていく。この感覚を味わえる機会も、あと何回あるだろうか。イスタンブール到着後、空港からホテルまでタクシーを手配しようかとも思ったが、踏ん切りがつかないまま止めておいた。
7時発のスカイライナーで成田空港へ、8時に着いた。カウンターも開いていたので荷物を預けて、お店を冷やかしてから出国手続きへ。既に自動化されているのだが、それでも出国スタンプを捺してもらってしまう。Duty Freeにも活気が戻ってきた。やはりこの賑わいがなくては。高揚感と少しの不安を噛み締めつつ歩いた。
10時過ぎに搭乗、隣の席が空いていたのは幸運だった。後は約13時間のフライトを何とかやり過ごすだけである。iPadで本を読もうとしたが、買い換えたばかりで多くの本のダウンロードを忘れてしまい、読むことができない。仕方ないので、iPhoneで「食卓の情景」などを読み、walkmanで古今亭志ん朝の噺を楽しむ。ロシア上空を飛べない今、どのようなコースを飛ぶのか?と思っていたが、フライトマップを見ると、中央アジア上空を飛んでいた。北京、西寧、タシケント、ブハラなどの地名が懐かしかった。後部で飲み物や軽食(おにぎりや小さいハンバーガー)を自由に取ることができる。飲み物はいただいたが、食べ物をとる必要はなかった。若い頃なら何か食べただろうが… ここ数年の旅は、老いを突きつけられる旅でもある。カスピ海上空を渡り、バクー、トビリシ…懐かしい街だ。「深夜特急」のイスタンブールの項も読んだ。これをなぞってみるのもよいかもしれない。
17:55にイスタンブール空港に到着、気持ちを入れ直す。イスタンブールでは過去に二度トランジットをしたことがあるが、ここを目的地とするのは初めてだ。もっとも、空港が移転しているので、あの時は違う空港ともいえるが。真新しくて快適な通路を歩いて、まずは入国審査。さほど混雑しておらず、スムーズに入国できた。下のフロアがバゲージクレームとなっていて、大きなDuty Freeがある。ATMがあったのでトルコリラ(以下TL)を引き出そうと試したが、手数料を10%も取るのでやめにして、近くの両替カウンターで50ユーロを1,470TLに替えた。レーンに行くと、既に預けた荷物が出ていたのは幸運だった。
旧市街のアクサライ行きのバスに乗るために地下2階へ行くと、あと5分ほどで出るバスに間に合った。クレカで205TLを支払い、18:35に空港を出発した。ここまでは順調だが、アクサライまでは約90分もかかるらしい。まだ日は高いが、なるべく早くホテルに着きたい。まずは車窓から、初めてのトルコの風景を楽しもう。高速道路も沿線のビルも近代的でアメリカのような景色だが、モスクの尖塔がトルコらしさを印象づけてくれる。市街に近づくと渋滞が始まった。早く抜けてほしいものだ。
バスは予想以上にスムーズに進んでくれて、19:30にアクサライに着いた。あとは、公共交通を利用するためのイスタンブールカードを買って、トラムT1線でスルタンアフメット駅に行けば、ホテルまですぐだ。まずアクサライのメトロの駅に行ってイスタンブールカードを買うことにした。すぐに自動販売機が見つかったが、日本のトルコ旅行関連サイトにあるものとは異なっている。幸い、日本語での表示もできるようになっていたので、クレカで問題なくカードを手に入れることができた。5分ほど歩いてトラムの停留所に行くと、ここにもカードの販売機があったが、長蛇の列ができていたので、メトロの駅に行ってよかったのかもしれない。すぐにトラムが来たので乗る。繁華街のど真ん中を走る路線だ。4駅ほどでスルタンアフメット駅に着いた。ここからGoogle Mapに従って歩く。ここは既に旧市街の中にあるようで、入り組んだ路地に飲食店や土産物店、ホテルなどがたくさんある。5分ほどで予約していた "Hotel Aldem" が見つかったので無事にチェックイン。陽が落ちる前にホテルに入ることができてよかった。これならタクシーを手配する必要もなかった。
部屋はよくある狭いつくりで、必要性を満たすだけのものだ。テーブルがないのがちと辛いが、このロケーションと価格では贅沢は言えない。Tシャツを着替えて、軽く散歩することにした。トラムの線路を渡ると公園になっている。ここに、トプカプ宮殿やアヤソフィア、スルタンアフメット・ジャーミィがある。夕闇が濃くなる中で、アザーンの声が響く。ライトアップされた尖塔が美しい。人々は楽しそうに歩いたりお店で食事したりしていて、平和な光景だ。何か食べておきたい気もするが、と言ってレストランでしっかり食事するほど空腹でもない。キョフテのバゲットサンドとヨーグルトドリンクをテイクアウトできる店があったのでそれを買い、230TLを支払った。ホテルの近くのスーパーで0.5リットルの水2本を24TLで買い、ホテルに戻った。バゲットサンドは結構大きく、しっかり焼かれたキョフテやトマトが挟んであって、なかなかに美味しかったが、とても食べきれないので具だけ全部食べて、パンは2/3ほども残してしまった。部屋のクーラーのリモコンの電池が切れているのか、温度調整が出来ないので、暑いか寒いか、になってしまう。
明日から4日間をイスタンブールで過ごす。まずは明朝にトプカプ宮殿を観光する。