Roma / Firenze

 昨夜は22:30にベッドに入った。途中覚醒もありつつも06:50までしっかりと眠ることができた。身支度を整えて8時にチェックアウトし、荷物を預ける。今日はバチカン美術館を観光し、夕方の特急列車でフィレンツェに移動する。"Caffe Fondi" でクロワッサンとカプチーノの朝食。3.7ユーロを支払った。地下鉄でOttaviano駅に行き、ヴァチカン美術館へ向かう。まだ8:45で、十分に余裕がある…と、この時は思っていた。近づくにつれて人の数がどんどん増えていく。既に当日券を求める長蛇の列が出来ているが、予約券を持っていて入場しようとする列も長い。何処に並べばいいのかもわからず、立っているスタッフに訊くしかなかった。いま9:10, 少し心配になってきた。途中でスタッフが入場時間で仕分けていた。9:30の列に並んで待つ。恐らく入場も遅れるだろうな… ここはこれまででも最も混雑している観光地かもしれない。周囲には露出の高い服装の女性を当てこんだスカーフなどを売る人たちもいる。いろいろな商売があるものだ。9:20を過ぎたがまだ9時の組を進めている… 明らかにチケットを売り過ぎでしょう…


 9時半に列が動き始めると、意外とスムーズに進む。建物に入り、セキュリティチェックを受けて、まずは絵画館から。最初に「ミケランジェロのピエタ」のレプリカがある。近づくこともできるのだが、やはり本物とは何かが違うような気がする。いくつもの宗教絵画の展示を経て、ラファエロの「キリストの変容」など絵画3点が展示されているところに出た。ネームバリューかもしれないが、やはりこの3点には見入ってしまう。天に昇らんとするキリストから本当に光が出ているような気がした。カラヴァッジョの絵画はなかった。もしかすると大阪万博で展示されているのでは?
 絵画館を出た後も彫刻など数えきれないほどの展示がこれでもかと言わんばかりに続く。観光客も多く、東京駅かアメ横を歩いているようだ。パンテオンを模したような彫刻の展示室などもある。床には古代ローマのモザイク画。これほどのコレクションもカトリックの歴史と威厳のなせることなのだろうか。中でも

「地図のギャラリー」
の絢爛な美には驚いた。全て見ていては体力の限界を超えるので、申し訳ないが古代エジプトやギリシャの展示はほぼ素通りした。この美術館には人類の美が結集している。
 ラファエロに関連する展示部屋に着くと混雑もピークに達した。部屋一面の絵画だから大きいはずなのだが、混雑で落ち着いて鑑賞することは難しい。周囲に惑わされない集中力と譲り合いの両立が求められる。それでも「アテナイの学堂」など美しい絵画をじっくりと鑑賞することができた。こんなふうに人類の叡智が善きことのために使われていればどれほどに素晴らしいことか。その後の現代宗教芸術は…関心が失せてしまった。ダリの絵画などもあったようなのだけど…
 いよいよシスティーナ礼拝堂へ。ミケランジェロの「最後の審判」と「天地創造」であまりにも有名だが、その高名に相応しい美しさ。人の手になるものとは思えない。この絵の中に、私もいるような気がして、つい探してしまう。死後はどちらに裁かれるのやら。…ただ、ここは大混雑のピークで、静粛をいわれているのにうるさい。時々係員から注意が入る。天井画を見ていると首が痛くなるが、横のベンチの空きを上手く見つけられたので楽に鑑賞出来るようになった。これだけの人物とモチーフをよくぞ美しく描き分けたものだ。こんな仕事を命ぜられたら絶望しかない。
 12:30にシスティーナ礼拝堂を後にした。この後も展示がいろいろと続く。バチカン美術館はとんでもない規模のところだった。確かに世界でも指折りの美しいものに出会うことができたが、ここを十全に味わうためには、もっと体力のある若い頃に訪れるべきだった。
 出口に向かうと、フードコートがあるとのことなので、ここでトマトやオリーブを使った冷製リゾット?にタルト、水の昼食を摂った。18ユーロを支払った。リゾット?はさっぱりしてなかなか美味しく、トマトや豆などの野菜がうれしい。果物2個までついていた。こちらも美味しい。タルトは甘さきつめだが、半分くらいなら美味しく食べられる。リゾット?も1/3くらい残したが、ちょうどいい昼食だった。
 この後も出口まであちこち通らされて、13:45にようやく外に出られた。外にはこれから入場せんとする人々が集まっている。暑さのピークでもあり、きついことだろう。ヴァチカン美術館を観光するのであれば、事前にチケットを購入するのはもちろん、その日の予定を十分に確保しておかなければならない。フィレンツェへ向かう列車の発車予定時刻は15:50なので十分に余裕がある。この予定の組み方で正解だった。


 地下鉄でテルミニ駅に戻り、ホテルで荷物を受け取って、15時には列車を待つ体制となった。2階のカフェでカフェインレスのカプチーノで一休み。2ユーロを支払った。
 15:30過ぎに乗車する

フレッチャロッサ9428
のプラットフォームが4番と表示された。この列車はヴェネツィア行きだった。乗車してみると既に満席で、スーツケースを置くところもいっぱいになっている。(後で知ったが、ナポリからの列車だった。) 幸い、横の一席分のスペースが空いている座席を確保したのでスーツケースの置き場には困らなかった。車内の冷房が止められていてとても暑い。定刻の15:50に発車、さらばローマ、素晴らしい街でした。結局、大学の卒業旅行でローマの何処を訪れたのか、全く思い出せなかった。
 ローマのもう一つの駅を出るとようやく冷房が少し効き始めたが、やはり暑い。ここからフィレンツェまで約2時間、ノンストップの列車旅である。検察が来たのでQRコードの切符を見せると「この車輌の冷房は故障しており、別の座席に移ることもできます」とのこと。さすがに暑いので承諾し、割り当てられた車輌番号4の11Dに移った。こちらはビジネスクラスで座席の座り心地も良い。スーツケースを椅子が背中合わせになっている間のスペースに入れた。少し通路にはみ出すが。途中停車駅もないので何とかやり過ごすしかない。
 ようやく車窓の風景を楽しむ余裕が出てきた。…と思ったらトンネルで徐行運転。フィレンツェ到着が10分遅れるらしい。トンネルを抜けると完全に止まってしまった。高速列車でもこれか… 15分も経ってようやく走り出した。到着はさらに10分遅れるようだ。少し冷え過ぎてきたので上着を羽織る。あの暑い車輌でこの遅れを待っていたら苛立ちも募るばかりだったろう。時速230km超でスムーズに走っている間は車窓の景色も美しい。傾き出した日の光に照らされる畑や家並み、廃墟のような建物も印象的だ。全てあっという間に過ぎ去っていくけれど。(
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 なんと遅れを取り戻してしまい、定刻の18:11にフィレンツェ・サンタマリアノヴェッラ駅に到着した。5分ほど歩いて予約している "Hotel Delle Nazioni" にチェックインした。ロビーに比べて部屋の内装がいささか貧相だが、必要十分を満たしているので文句なし。夕食を摂るために再度外出した。駅の横にフィレンツェ名物の肉料理を出すレストランがあったが、価格と分量を見て諦め、駅構内のカフェで

ターキーのフォカッチャサンド
を食べた。焼いてもらったので暖かく香ばしいし、ターキーは好物だし、シャキシャキのレタスも美味しい。スプライトをつけて10.40ユーロを支払った。
 19時に食べ終えて駅構内を歩いていると、不意に「いま旅をしている!」という大きな満足感がこみ上げてきた。きっかけも何もなくいささか驚いたが、きっと心からこの旅を楽しんでいるのだろう。駅をでてまわりを見ると、有名なドゥオーモが見えた。夕景を眺めるにはいい頃合いでもあり、そのまま見に行こうという誘惑にかられたが、やはり今日のところは休むべしと思い直してホテルに戻った。  明日はフィレンツェの有名な見どころやウフィツィ美術館を訪れる。晴れて暑さも収まりますように。


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